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羨望

「なんという才能と努力、生まれ持った物の差というものは歳を重ねるごとに跳ねる……」


 先生は俯いたまま、呟くように言う。


「君達は知っているかい? 難関大学合格者の何割が親の仲が良好かを。君達は知っているかい? 地方出身者と首都出身者で大企業の就職率がどれぐらい変わるかを。生まれは全て。生まれは全てを変えるんだ……」


 先生はうわ言のように言う。


「俺は小兵だ。お前の言う通りドラフトにはかかりづらいだろう。けど、努力で、プロになってみせる。親父を超えて見せる」


「その身体能力も整った食事と育ちだ。運動神経というものは幼少期に形成される。君は、恵まれているんだ」


 まったく、ああ言えばこう言う。

 この人の過去になにがあったのだろう。


「憎い、憎い、持っている者が憎い。羨望も収入も全てを手に入れる持っている者が憎い。地べたを這いずる庶民の気持ちなどお前にはわからぬのだ……」


 ざわりとした感触。

 なにか、異変が起こっているという予感があった。

 先生の元に魔力が集中していく。


 春歌が目を見張った。


「その人、悪霊憑きになった!」


 春歌の言葉に俺は動揺する。

 霊力、魔力、悪霊憑きの組み合わせはヤバいと愛の照星の記憶が証明している。


「憎い、憎い」


 先生の魔力が増大していく。


「その魔力でさっきの技を放たれたら、こんな球場、いや、市が……」


 春歌の口には焦りが混ざっていた。



つづく

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