表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

586/611

最強の戦士

 春武は意識が朦朧としていた。

 自分の心が徐々に自分から手放されていくような感覚。

 なにか自分が新しい別の者になろうとしている。

 そんな予感があった。


 心地良い。

 ぬるま湯に浸かっているかのような。

 今にも溶けてしまいそうだ。


 その時、差し出す手があった。


「春武!」


 辰巳の声だ。


「意識を取り戻せ! お前はまだここで消える奴じゃない!」


「消え……る?」


「お前は俺のライバルだろ! こんなところで消えるな!」


「ライ……バル?」


 辰巳はもどかしげに言う。


「お前、野球を忘れられんのかよ!」


 今の一体感は心地良い。

 けど、そこから伸びるように自我が生える。

 マメの潰れた手の感触が蘇る。


 そうだ、野球。

 親父と俺の絆。

 愛の認めてくれたもの。

 俺の根幹を形作る競技。


「おおおおおおおおおおおおおおおお!」


 俺は雄叫びを上げていた。



+++



「あーいー」


 愛は意識が朦朧としていた。

 なにか自分が一つになりかけている予感がある。

 しかし、抵抗はない。

 むしろ、歓喜のような感覚がある。


「駄目ね、これは。本格的に取り込まれかけてる」


 愛は意識が朦朧としていて返事ができない。


「挑みもせずに逃げるの?」


 春歌は挑発するように言う。


「エイミー・キャロラインに」


 冷水に打たれたように我に返る。

 そうだ。まだ自分は母に挑んでいない。

 まだ何も始まってない。

 こんなところでぬるま湯に浸かってはいられない。


 愛は自分の意識が徐々にはっきりしていくのを感じた。



+++



 閃光が放たれた。

 ギシカは再び吹き飛ばされる。

 しかし次の瞬間には再生して飛びかかっている。


「頭を吹き飛ばせば流石に終わるかな」


 先生は淡々とした口調で閃光を指に集中させる。

 ギシカはぎくりとした。


 その瞬間、後方から爆発的な魔力が巻き起こっているのを感じた。

 春武と愛。神格クラスの魔力を持つ父と母を持つ二人の合体。

 それも、技量と身体能力の春武、回復能力と無効化の光を持つ愛。

 互いに足りないものを補完し合う合体。


 出来上がるのは、最強の戦士。


「おおおおおおおおおおおおおおお!」


 春武の声が、その場に響き渡った。

 最強の戦士は、生まれた。



つづく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ