せんこう
地面にクレーターができていた。
俺は吹き飛んで、ずたぼろになって、地面に横たわっていた。
服がボロボロになった先生がその中央で佇んでいる。
「混合力を臨界まで高めて爆発させる。せんこう。私の必殺技だ。君のような従来の高い魔力を持つ者以外なら吹き飛ぶだろうな……例えば、ネックレス未装着時の君の父のように」
「何故、親父を憎む」
俺は先生を睨みつける。
体に力が入らないが、威勢を込めて。
「真の平等とは、なんだ?」
「持っている者がいない世界だよ」
先生は淡々とした口調で言った。
「この世は不平等だ。持っているだけで優遇される。持っているだけで取り巻きができる。持っているだけで人格まで美化される。さらに持っている人間には持たないん人間の羨望という名のドレッシングがかかってさらに輝くというじゃないか。これ以上の不平等はない。持って生まれた君にはわからない。持たない者の苦しみが。あの石と出会い、この世の真実を知った時、私はそうと考えた」
「持つ者全て殺す気かよ」
「ああ、そうだ」
先生は淡々とした口調で言った。
「井上岳志、エイミー・キャロライン、あずき、アリエル、雛子、六華都知事。君の周りにいる持っている面々も私は殺して回るだろう。真なる平等のために」
「狂ってる……」
「ああ、自覚している。狂っている、と」
先生は目が座っていた。
それを見て、俺は背筋が寒くなるのを感じた。
「貴方がここまでこれたのも努力があってでしょうに」
そこに響いたのは、愛の声だった。
体が軽くなる。
愛のヒールだ。
愛の言葉だけで、俺は勇気が引き出されるのを感じた。
「朝から晩まで修練を積んだことは? 手の豆が潰れるまでバットを振ったことは? 才能だけじゃない。努力あってこそ才は花開く」
「君は知っているかね。君達の好きな野球。ドラフトでは完成度よりも素材を見て選手を選考するそうだ」
先生は俺を指差す。
「小兵で選ばれるにはよほど突出した結果を出さねば無理ということだ」
「春武ならやってのけるわ」
愛は断言した。
「そうだよ、先生。魔力無しでこいつは指折りの野球少年だ! 努力をして持つ側に回る人間の一人だ。先生、あんたのように」
辰巳が叫ぶ。
「私のように……? 私が、持っている?」
「三百人を越える生徒に霊力という独特の体型の開発。先生、貴方は既に持っているのです」
春歌が淡々とした口調で言った。
「どいつもこいつも親の七光りの若造が……」
先生の混合力が再び膨れ上がる。
「春武!」
「なんだ?」
愛の方を振り向く。
愛は俺に手を伸ばしていた。
「合体するわよ!」
俺は困惑していた。
愛と俺は血縁でもないのに何故?
「ギシカと合体できた。春武とも合体できると思う」
俺は唇の片端を上げた。
「わかった」
理屈はわからない。
けど、やれるならやるしかない。
先生を倒す突破口が見えてきた。
つづく




