照星
「先生は俺の名に相応しい術を教えてくださった。その前でお前らは灰燼に帰すだろう」
そう宣言すると、照星は片手を高々と掲げた。
「照星」
その瞬間、照星の手から光が放たれた。
それは天井に届くかというところで急降下し、流星群のように周囲に降り注いだ。
愛は咄嗟に光のバリアを張る。
こんな時のために母直伝で習った技だ。
光のバリアで流星群を受け止める。
しかし、流星群は止む気配がない。
辰巳がファイアボールを投じたが、流星群に掻き消えて終わった。
周囲には眩い光が溢れている。
ギシカはそっと、光のバリアの外に手を出した。
その瞬間、ギシカの指は消滅していた。
しかし、すぐに再生する。
「どうにかしなきゃ」
ギシカは決意の籠もった声で言う。
「陰陽連の技術でどうにもならないのか?」
辰巳が弱音を吐く。
「これだけの魔力量を覆すような便利な技はないわねえ」
春歌はのんびりとした口調だが、頬に冷や汗が流れていた。
+++
決戦が始まった。
先生は腰を落とし武闘の構えを取る。
俺もそれに習う。
刹那の構えだ。
瞬時にそう理解した。
幼い頃から修練の相手だった刹那。
その経験値まで相手は吸っているのだろうか。
だとしたら、思っていたよりも難敵だ。
刹那は俺なんて、片手であしらえるのだから。
けど、俺は勝たなければならない。
親父に託されたのだ。
こなして見せる。
「目が、変わりましたね」
先生は感心したように言う。
「前はもっと、向こう見ずで、経験の浅い子供の目をしていた。しかし、今の貴方の目は戦士のそれだ」
「死線を潜ったんでな。今日の俺は今まで通りにはいかないぜ」
「やはり最重要人物は貴方だった。貴方の成長力。それを私は心の何処かで脅威に思っていたのかもしれない。子供だけが持つ無限大の可能性。侮れたものではない」
先生は息を大きく吐く。
「それも今日で終わりです。ここで貴方は物言わぬ骸に成り果てる。成長し切る前に芽を摘ませてもらいましょう」
「先生って呼ばれる割には非道だな」
「全ては、真の平等を齎すため」
先生が戦闘の準備を終えた。
「いざ」
次の瞬間、先生の体は眼前にあった。
つづく




