二つの決戦
愛達は照星を市民体育館に呼び寄せていた。
ここなら邪魔は入らない。
「叩きのめさせてもらうぜ」
辰巳が言って、翔吾と合体する。
ギシカが先頭に立ち、皆を守る。
春歌は後方で様子を見ている。
「言っておくけど、動きを止めてね。そうじゃないと悪霊は祓えないから」
春歌の言葉に、辰巳は頷く。
照星はくっくっくと笑った。
「どうしてまんまと呼び出されたかわかってないようだな」
「どういうことだ?」
辰巳が剣呑な調子で訊く。
「お前達なんて、相手にならないってことだよ!」
その瞬間、照星の体から魔力と霊力の混合力が放たれた。
もしもオーラが可視化できれば眩しすぎて直視できなかっただろう。
春武にも匹敵するような混合力があった。
(春武……私達は勝つよ)
愛は思う。
正直、自信はない。
ただ、ギシカや辰巳や春歌は頼れるメンツだ。
(だから、春武も、勝って。勝って、デートしよう)
祈りつつ、愛は構えを取った。
+++
「確かに魔力を抑えてるね」
千紗は話が早かった。
早々と探知を終えると、球場周辺に先生がいることを突き止めた。
「俺も加勢するか?」
親父が言う。
「いや、良い。悪霊憑きが観客を襲うかもしれない。親父はそっちに対処してくれ。先生は俺がやる」
「言ったと思うが、誰もお前の死は望んじゃいないぞ」
俺は苦笑する。
「勝つよ」
親父は微笑んだ。
「それでこそ俺の息子だ。球場の観客は任せろ。先生は、任せた」
「ああ」
認められている。それがくすぐったい。
「じゃあ、いってくる」
俺はそう言うと、早足で球場を出た。
夕暮れ時の球場へと、観客達が歩いていく。
その中で、足を止める男が二人。
先生と、俺。
「やっぱり来やがったか」
「ほう。読みましたか」
意外そうに先生は言う。
「照星は良い足止めになると思ったのですけどね。まさか貴方が仲間を見捨てるとは」
「見捨てたんじゃない。信じたんだ」
元の日常に戻れる。
言い聞かせるように思う。
「観客が入場を終えたらやろうぜ。今日はあんたと決着をつける」
「良いでしょう。私も喉に引っかかった小骨のような存在の貴方に辟易としていたところだ……しかし」
そこで先生は言葉を区切る。
「君の養母の魔力を吸った今、私の混合力は貴方の魔力を優に越える」
はったりでないとわかっている。
冷や汗が出る。
けど俺は踏みとどまった。
決着をつけるなら、今日だ。
つづく




