表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

576/611

原因

 翌日、目が覚めると愛は肌着で寝ていた。

 自分の部屋だ。ギシカの部屋ではない。

 姿見を見ると自分自身の肉体がそこにはあった。


「なんだったんだろう……」


 思わず呟く。

 唐突に終わったギシカとの入れ替わり。

 それともあれそのものがなにかの夢だったのだろうか?


 確認のためにギシカに電話をかける。


「体、元に戻ってた!」


 ギシカの興奮気味の声が、あれが夢ではなかったことを教えてくれた。


 その日の放課後、愛は春歌を訪ねていた。


「そっか、戻ったんだ」


 興味なさげに春歌は言う。


「何が原因だったのかしら?」


「愛ちゃんは何が原因だと思う?」


 試すように春歌は問う。


「やっぱりメンタルが不安定なギシカじゃないかな。なにか嫌なことがあったとか。あるいは春武と恋人になりたかったとか」


「そうじゃないんだなあ」


 春歌はちっちっちと扇子を振る。


「不安定だったのは貴女だよ、愛ちゃん」


 思わぬ言葉に衝撃を受ける。


「私が? 不安定?」


 あり得ない、とばかりに言う。


「春武の口から、嘘偽りのない愛してるを聞きたかった。それで貴女は不安定になって、ギシカちゃんの体を借りたんだね」


 愛は口元に手をやる。

 確かにそう考えると、元に戻ったのも納得がいく。


「私って……そんなメンタル弱い?」


「私達は良くも悪くも思春期なんだよ。それも、魔力を持った。色々起きるさ」


 達観した様子で春歌は言う。


「これからもこんな事が起きるのかしら?」


「起きないだろうね」


「どうしてそう言い切れるの?」


「自分が原因だとわかって貴女に自制心が芽生えたから。ブレーキが自然とかかるようになっちゃったんだね」


 沈黙する。

 つまりなにか、今回のことは何から何まで私が悪いと。

 愛は脱力した。


「腑に落ちたわ。ありがとう。春武達と合流してくる」


「送らせるよ。道中の護衛は必要でしょ」


「ありがと」


 そこまで春武のことを考えて自分を追い詰めていたのか。

 そう考えていると頬が熱くなる。


「未熟、未熟」


 そう呟いて、愛は天を仰いだ。

 こうして、小さな事件は一つの結末を迎えたのだった。


 それから数日、愛は春武と口を利かなかった。

 あの告白を聞いた後だと、小っ恥ずかしくて、話す気にならなかったのだ。



つづく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ