人間ってこんなに不便なの?
ギシカが愛の体で覚えているのは違和感の連続だった。
聞こえるはずの音が聞こえない。
嗅げるはずの匂いが嗅げない。
カバンは重たく自らの体も重く感じる。
しかもダメージにも敏感だ。
人間ってこんなに不便なんだ。
あらためて自分の人間離れしたハーフデビルとしての体を実感したギシカだった。
そしてギシカがやっていることと言えば、突っ伏して寝ている。
昨日寝てないと嘘をついたのだ。
愛の友人は気が強くて口数が多い人が多い。
ギシカが尤も苦手とする人種だ。
体は脆いのに心は強い。
謎の生物、ニンゲン。
どうしたものだろうと突っ伏している内に一日は過ぎた。
意外だったのは愛のノート。
授業中は流石に寝ているわけにはいかないので広げるのだが、可愛いワンポイントキャラなどが書かれている。
(意外な趣味)
最初に見た時は目を丸くしたものだ。
早く春歌と合流したい。
元に戻りたい。
せっかく仲直りした母の帰りを出迎えたい。
そう思うのだが、今のギシカには打つ手はないのだった。
体育の授業、ギシカはペース配分を間違えて腹部が痛くなった。
(まったく、ニンゲンってこんなに脆いの?)
唖然とするギシカだった。
愛だって運動神経は良い方なのだが。
無限のような体力を発揮するギシカの体には届かないのだ。
つづく




