表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

570/611

その手で春武に触ったら……

 愛とギシカは早朝の登校路で向かい合っていた。

 ギシカは腕を組み、強気な様子。

 愛は俯きがちで、おどおどした様子。

 中身が逆になると印象までまるで違う。


「どういうことだと思う?」


 愛がギシカの口で問う。


「アリエルさんに言われたことある。ギシカと愛の魔力の波長は似てるって」


「その影響がこの現象を引き起こしたってこと?」


「だと思う。そうとしか考えられない」


「それだけ?」


 愛は剣呑な表情でギシカを睨めつける。


「あんた、春武に未練があって私の体を乗っ取ったんじゃないでしょうね」


 ギシカは仰天する他ない。


「そんなことない! 私、そんな事考えもしなかった!」


「その手で春武に触れたら……酷いわよ」


「勿論だよ、指先一本触れたりしないよ!」


 愛はしばらく胡散臭げにギシカを睨めつけていたが、そのうち溜息を吐いて視線を落とした。


「どうしよう?」


「春歌に相談する他ないんじゃないかな」


「やっぱそれかあ。陰陽連にあんま貸し作ると怖いけど」


「そうかな? 慈善団体だよ」


「理解してないのねーあんた。私達今の時点で相当利用されてるわよ」


 そう言われてみるとそうかもしれない。


「とりあえず当面はこの体で乗り切るしかない。ボロを出さないようにね」


「わかった。春武達には?」


「……言わなくて良いかな、心配かけたくないし。けど、くれぐれも」


 ずいっと愛は顔を近づけてくる。


「特権乱用とばかりに春武に近寄らないで」


「距離置いとくよう」


 気弱に答えるしかないギシカだった。



+++



 英語の授業がやって来た。

 ギシカは早速当てられる。


「貴女のお母様は海外の大学を卒業して若くして都知事に就任しています。これぐらい答えられますね? 井上さん」


 いつもこんな調子で当たられているのか、と愛は呆れ混じりに思った。

 完全な回答を答える。

 教師は目をパチクリとさせる。


「さらに応用としてはこのような文例も考えられます」


 ネイティブな母を持つ愛特有の知識を活かした応用も見せる。


「まあ、先生は勿論ご存知でしょうが」


「ええ、結構です。井上さん、流石ですね」


 気まずげに教師は言い、手早く次のページに進む。


(苦労してんだ、あれで)


 そんなことを慮った愛だった。

 ギシカは今頃どうしているだろう。



つづく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ