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照星

 次の襲撃者の名前は照星と言うらしい。

 それに備えて俺達ができることはない。

 普段通りの日常を送るだけだ。


 河川敷の練習場でバットを振るう。

 金属音がして硬球が高々と飛び、ネットに突き刺さった。


「相変わらず飛ばすな」


 鬼瓦部長が目を細める。


「打撃だけは自信があるんです」


「課題は守備だな」


 痛いところを突かれて俺はぐうの音も出ない。


「親父は守備がべらぼうに上手かったのにな」


「親父と俺は違います」


 ややムキになって言う。

 部長はくっくっくと笑うと口を開いた。


「そうだな、悪かった。しかし難しいぞ。辰巳や翔吾から外野のレギュラーを奪うのは」


 辰巳や翔吾は俺の親父のファンだっただけあってべらぼうに守備は上手い。

 辰巳は肩も強いし翔吾の守備範囲は驚異的だ。

 層が厚いんだよなあと思う。


 結局また抑え役かなあ、と落胆する。


 帰り道、愛が顔を覗き込んできた。


「あんた、翔吾や辰巳に負けてんだ」


 唐突な言葉に俺は戸惑う。


「打撃は勝ってる」


「けど、総合力で負けてるんだ」


「しょうがないだろ。アイツラは霊力を身体能力に変換してるんだ」


「けど、頑張ろうよ。春武なら勝てるよ」


 信じ切った表情で言う。

 俺はその瞳に弱い。

 応えなくては、という思いにかられる。


 苦笑して、頷いた。


「ああ。必ず追い抜いてみせるよ」


「それでこそ、だ」


 それまで口を閉じていたギシカがぽつりと語り始めた。


「ねえ」


「なんだ?」


「もしかして二人って、付き合ってるの?」


 俺と愛は目を見合わせた。

 まだそのことに関してはギシカに告げていない。

 女の勘って怖い。そう思った俺だった。



つづく

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