あと、二人
由希、もとい冴子は、自分の状況をとつとつと語り始めた。
先生に集められたのは四人。残るは、二人。
「私でもわかるぐらい爆発的な才能の持ち主だった。先生の真打ちは、多分ここから」
冴子の言葉に、俺は腕を組んで唸った。
「あんたも相当強かったぜ。必殺技は紙一重だった」
「ありがとう。本気で嫉妬してたからね」
冴子は苦笑する。
「冴子、さん。前世の記憶は?」
愛が躊躇いがちに訊く。
「もう記憶として吸収されたわ。それでも、私は、貴女が愛しい」
真っ直ぐに言われて、愛は戸惑うように視線をそらした。
「そ、そっか。そんな真っ直ぐに愛情表現された経験少ないから、戸惑うなあ」
俺としても複雑だ。
愛と冴子は前世では恋人だった。けど、今の愛の恋人は自分なのだ。
「毎日ライン送るよ。返してね」
冴子は、俯きつつ言う。
「わかったよ。けど、前世みたいに深夜までってわけにはいかないわよ」
「うん、わかってる。愛には愛の生活があるし、愛の恋人もいるしね」
収まるところに収まったのだろうか。
「んじゃ、脅威もなくなったし、試合見るべ」
辰巳が上機嫌に言う。
翔吾は呆れたように辰巳を見ている。
俺は苦笑した。
「そうだな、冴子の歓迎式だ。名古屋ドームのドーム飯って何が美味いんだろうな」
言いながら、俺達は歩いていく。
残り二人。
そして、その後には先生がいる。
戦いはこれからだ。
試合は、親父が抑えて親父がホームランを打って圧勝だった。
これでホームランダービートップだ。
「普通アメリカから日本の適応にも時間がかかるもんだけどなあ」
呆れたように言う辰巳だった。
つづく




