融和と拒絶
愛の中で二つの気配が融和していく。
そしてそれは一つに解けあった。
「吃驚した」
愛は戸惑うように言う。
「落ち着いたのか?」
「うん。前世の記憶がぶわーって蘇って。それが今の私の一部になった感じ」
愛はしっかりと前を向き、相手を見る。
「由希、さんね」
相手は、一つ頷く。
「圭介、よね。女の子になってるとは思わなかったけど」
「私は女よ。性自認も女だし、男の子と交際している。貴女とは交際できない」
愛はいつもの、少しきつくも感じるはっきりとした口調で言った。
「どうして!? 来世で結ばれようって約束したじゃない!」
「由希……」
愛は一つ咳払いをして、言葉を紡ぐ。
「圭介さんはもう私の一部になったから、彼の思考を再現して、言うね」
由希、と呼ばれた女性は深刻な表情で頷く。
「由希、俺は新たな人生を進んだよ。片親だけど母親に愛されて、怒鳴られることも金切り声を聞くこともなく育ったよ。その結果、自分を受け入れられる人間になった。君と共依存に陥って、先のない恋をする自分は終わった」
「キョウイゾン……?」
理解できない、とばかりに由希は感情の籠もらぬ声で言う。
「自分の足で、自分で歩いていくんだ。依存するんでなく、お互いに支え会える人と行くんだ。だから俺は、尊敬できるこいつを選ぶ」
愛は、また咳払いする。
「こんなところかな。貴女も、自分の道を見つけてみて」
「ずるいよ」
由希は呟くように言った。
「圭介だけ幸せな家に生まれて、新しい恋を見つけて。共依存? なにが悪いの? 私達は愛し合っていた。不幸な境遇を理解できるのは互いだけだった。だから他に何もいらなかった。だから約束した。来世で結ばれようって」
「その約束は、もう果たせないのよ。私、女の子なんだもん」
「女同士だったって良い!」
「弱ったなあ……」
「ライン教えて! そうだ、その前に」
由希の目が細められた。
「私達のキョウイゾンを邪魔するこいつを消してあげる」
霊力と魔力の混合力。そこに悪霊憑きの重ねがけ。
そんな相手が、混合力を高め始めた。
強い威力の技が来る。
融和と拒絶。
その先にあるのは破壊だ。
つづく




