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佐藤冴子は考える
愛知に接近しつつある。
悪霊憑きとは凄いものだ。
悪霊が身についた途端にとてつもないパワーを手に入れたのがわかる。
それでも、前任者は敗北した。
気を引き締めてかからねばならぬだろう。
それに、気がかりもある。
予感がある。
運命の人と出会うと。
前世の運命の人。
僅かだったそれは、徐々に大きくなり始めていく。
彼と歩いた景色。彼と歩いた人生。彼と歩いた記憶。
一欠片一欠片が貴重なもので、抱きしめたくなる。
「圭介……」
佐藤冴子は、そう呟いていた。
新幹線の中だった。
つづく




