じゃあデートしよう
翌朝、俺は愛の家を訪ねた。
エイミーが笑顔で出迎えてくれた。
「いらっしゃい春武~。本当お父さんに生き写しねえ」
「あんまその評価、嬉しくないんだけど……」
父との蟠りは解けつつあるとは言え未だに抵抗感がある俺なのだった。
愛がゆっくりと、怯えるようにやってきた。
しかし、俺に見られていると気づくと、胸を張って前進を始める。
「昨日の件、答えは出した?」
「ああ」
俺は頷く。
一瞬、アリスの顔が脳裏に浮かんで消えた。
今の俺では彼女を幸せにできない。だから、忘れるのが優しさなのかもしれない。
今はまだ、彼女は選択肢に浮かんではいないのだ。
「受けるよ。愛の言葉」
愛は息を呑んだ。
「じゃ、じゃあデートね。予定準備しなさいよ」
「東京詳しくないんだけどなあ」
幼い頃から何度も来訪しているとは言えど庭のようにはいかない。
「いいから、初デート、準備、しておいて!」
愛は言うと、俺とすれ違って家を出ていった。
不機嫌そうな口調だったが、その表情が喜びで紅潮していたのを俺は見逃さなかった。
あれ、可愛いぞ?
愛のことを、そんな風に感じ始めている自分がいた。
つづく




