私と岳志君と先輩の三角関係なんだから!
「じゃ、あずきとアリエルはここまでだね。また遊ぼうね」
そう言ってエイミーが気が早く別れの挨拶をする。
「なに言ってんだお前」
俺は不思議そうに言う。
「あずきさんがいなけりゃ東京観光なんて一切わかんねえよ俺」
「東京に住んでるのに?」
エイミーが唖然とした口調で言う。
「野球すんのに都会に引っ越しただけだからなあ」
「と言っても夏休みだからね。四方八方の都道府県から集まる人人人。観光は気疲れするだけじゃないかなあ」
「それじゃあエイミーはなにすればいいんだろ」
エイミーはしょんぼりした口調で言う。
「やっちゃう?」
そう言って、あずきは親指でスティックを弾く仕草をした。
「いいねえ」
俺も、その仕草を真似る。
早速、俺達のアパートに戻ることになった。
途中、コンビニで菓子を買い込む。
暴君ハバネロを買うのも忘れない。
これが後々良いアクセントになるのだ。
家の前では、幸子と雛子が立ち往生していた。
「こんな暑い中なにやってんの」
俺は苦笑交じりに問う。
「岳志君と雫さんが来るの待ってた。てかお前がエイミーか!」
そう言って雛子はエイミーを指差す。
エイミーは目をパチクリとさせて頷く。
「あのね、現状は私と岳志君と先輩の三角関係なんだから。揺れる想いなんだから。これ以上ややこしくしないでよ!」
「いやいや、俺と先輩の直線通行関係しかないから」
「むー」
雛子は不満げに唸る。
エイミーは呆気にとられていたが、その間にあずきが部屋の扉を開けた。
「じゃあやろうか」
あずきが言う。
「スマブラ王決定戦!」
「敗者は暴君ハバネロ一掴み食べること」
俺は清々しい笑顔で付け足す。
「さ、トーナメント作ろ、トーナメント」
そう言ってあずきがどこからともなくホワイトボードを引っ張り出してくる。
「東京に来てまで……スマブラ……」
エイミーは少し落胆したように言ったのだった。
いいぞ、これは俺の好感度が徐々に下がっている。
ちなみにエイミーは暴君ハバネロを食べて三度は悲鳴を上げた。
続く




