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異変

 刹那に霊力と魔力の併用というプランを聞いて俺は驚いた。

 確かにあの時の悪霊憑きは異様な魔力を有していた。


「確かに能力は数段上がる。試してみる価値はあると思う」


 刹那は言う。


「ただし」


 そう言って俺の鼻の頭を指で抑える。


「私が実験台として様子を見る。異変がなかったら貴方達も使って」


「……安全なんだよな?」


 俺は不安になりつつ言う。

 刹那になにかあれば俺は生きていけないだろう。

 それほど、俺の中で刹那の占めるウェイトは大きい。


「多分大丈夫。件の悪霊憑きも肉体的異常は感じられないし。ただし天性の魔力を持った上で重ねがけしたのは私が初めてって点が不安点ではあるわね」


「最悪の場合は、魔力の消失……」


 愛の言葉に、俺は安堵する。

 死ではないなら良い。

 刹那は覚悟していたらしく、頷く。


「その程度のリスクは考えるべきね。肉体的に異常があっても愛ちゃんのヒールがあるから大丈夫だし」


「そこまで信頼を置かれても困りますが」


「エイミーの娘よー。それぐらい期待するわよ」


 それなら俺にも期待してくれて良いのに、と思う。

 まあ、あの親父の息子だから仕方ないか。


「ん」


 刹那が呟くように言って、腹を擦った。


「なんか、腹が鳴ってる……」


 俺は身を乗り出した。

 刹那は真顔で、言った。


「お腹空いた」


 立ち上がると、刹那は鬼瓦に何やら頭を下げて、使い走りさせた。

 なにをしてたか訊いてみると、結果はこうだった。


「なんかやけにお腹が空くから、デリバリー頼んじゃった」


 恥ずかしげに言う。

 それぐらいのデメリットなら大丈夫そうだ。俺は胸をなでおろした。


「けど、今後一ヶ月ぐらいは様子を見るわよ。その間、貴方達は霊力を身に着けるのは禁止ね」


「わかった」


 その結末に俺は胸をなでおろしたのだった。



つづく


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