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六階道、か
その日の夕方、河川敷に刹那がやってきた。
ラインで連絡は受けていたがそのフットワークの軽さに驚いた。
「六階道、か」
部長が目を細める。
「鬼瓦さん。お久しぶりね」
刹那は苦笑する。
なにか接点があるのだろうか。
思い当たるとしたら親父だが。
「なんの用だ? 見ての通り、ここは普通に野球を指導している場だが」
「ちょーっと辰巳君と翔吾ちゃんに用事があってね。ちょっと良いかしら」
「……ふむ」
部長は数秒考えたが、頷いた。
「お前が動くということは理由あってのことだろう。辰巳。翔吾、来い!」
呼ばれて、様子を伺っていた辰巳と翔吾が刹那のもとへ行く。
俺は投球練習の最中に、気も漫ろにそれを伺いみていた。
辰巳と翔吾は呼ばれると、身振り手振りで刹那に解説する。
刹那は顎に手を当てて考え込むと、拳法の構えを取った。
その瞬間、刹那から爆発的な魔力を感じた。
刹那からは今まで感じたことがない規模のものだ。
刹那は満足げに頷くと、去っていく。
「おい」
俺が声につられて慌てて前を向くと、眼前に硬式球が――。
つづく




