気にしすぎだって
「自意識過剰」
ラインで屋上に呼び出した愛は制服姿でそう切って捨てた。
ギシカの態度が妙なことを相談したいと思ったのだ。
「合体したから意識しちゃってんじゃない? あんた初心だから」
愛は呆れたように言う。
「そんなことない。確かに変だ」
「自意識かーじょーおー」
愛は間延びした口調で俺の額をつつきながら言う。
「そもそもあんたが努力してるなんて今更じゃない。東京来たってトレーニング欠かしてないんだから」
「それをあらためて言ってくるかなって」
「合体して記憶が流れ込んだんでしょ? それは感心するかもね」
愛はそう言うと、やれやれとばかりに去っていった。
(考えすぎかなあ)
言われてみると、そうかも知れないと思えてくる。
やはり愛に相談して正解だった。
俺はウキウキとした足取りで愛の後を追った。
+++
「ギシカー」
ギシカは、愛に呼ばれて不可解な表情になりつつも、立ち上がった。
「はーい、なあに、愛ちゃん」
近づいていくと、囁かれた。
「あんた、春武のこと、好きなの?」
ギシカはぎょっとして、思わず顔が熱くなるのを感じながらのけぞる。
「そうなのね」
愛は呆れた、とばかりに腕を組んだ。
「ち、違うよ。好きとかそうじゃなくて、かっこいいなって」
「そうなんじゃない」
愛はずいっとギシカの顔を覗き込む。
「……負けないから」
愛はぽつり、と呟くと手を振って去っていった。
ギシカは思わずへたり込む。
「愛ちゃんこわー……」
意思の強い愛だ。物怖じしない。
けど、春武に抱いた想いは変えようがないのだった。
つづく




