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春武ギシカペア対人狼
悲鳴と混乱が巻き起こる観客席で俺はギシカと合体して人狼と向かい合っていた。
なんという身体ポテンシャル。
これを活かしてこなかったギシカに腹が立つぐらいだ。
俺は魔力を体内循環させてその身体能力を更に高めると、相手の腹を蹴った。
人狼は吹き飛ぶ。
(あれ、俺、今最強?)
ハーフデビルの身体能力に陰陽連仕込の身体能力向上術。
これならもしかすると噂に漏れ聞く親父の神秘のネックレス装着状態を超えられるかも知れない。
俺は縮地を使うと、相手の腹に拳を突き立てた。
相手は再び吹き飛ぶと、胃液を吐いて吹き飛び、壁を吹き飛ばして外へと落ちていった。
「あっ」
後悔した時には遅い。
人間の身体に戻った相手が地面へと落下していく。
ギシカが混乱して合体が解かれる。
俺は縮地を使うと、地面と壁を蹴って相手を抱きとめて着地した。
穴からギシカや様々な人々が覗いてくる。
「完全勝利だ!」
俺が腕を高々と掲げると、ギシカは安堵したように表情を緩めた。
ざわめきが場を支配していた。
つづく




