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不審者
マウンドで岳志が練習投球をする。
一球一球のたびに物凄い喝采が起こる。
お祭り騒ぎのようだ。
十数年ぶりの日本球界復帰登板。
それは盛り上がるというものだ。
ベンチから千紗は魔力の探知を行っている。
魔力に似た気配。俗に言う霊力は確かに感じる。
巨大な魔力を持つ春武が来たことによって若干判りづらくなったが、精密な探知能力を持つ千紗なら問題にならない。
三塁ベース側の席に、いる。
直ちに春武にラインを送る。
その時、千紗は間の抜けた音を聞いた。
軟式ボールが弾むような音。
次の瞬間、岳志は腹から血を流して蹲っていた。
千紗は真っ青になった。
つづく




