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狙いが把握できたわね

「敵の狙いが把握できたわね」


 刹那は腕組をして難しい表情になると言う。


「ですね」


 千紗が頷く。


「と言うと?」


 わかってないのは俺だけか。

 そんなことをしている間に愛、ギシカ、辰巳、翔吾が辿り着く。


「なんだ、もうやつけた後じゃん」


 辰巳が不満げに言う。


「……戦闘、なくて良かった」


 愛を抱っこして駆けてきたギシカが胸を撫で下ろす。


「で、相手の狙いってなんなんだよ、刹那」


 俺の問に、刹那はしばし躊躇った様子だったが、そのうち諦めたように溜息を吐いた。


「井上岳志に注がれる霊力の吸収。多分それが最終目的よ。この子達は兵隊でしかないわ」


「井上岳志!?」


 辰巳が大声で言う。


「六階道。お前、やっぱり井上選手の関係者か?」


 辰巳が様子を豹変させたので俺は戸惑う。

 まあ、確かに親父の岳志は世界的に有名なのだが。

 二代目大谷翔平と呼ばれるだけはある。


 それだけの名声に注目は集まる。その時、霊力も大衆から注がれる。

 その結果、莫大な魔力、いや今回の例で言えば霊力だろうかを纏うならば。


 それを掠め取ろうと動く勢力が出てくることも頷ける。


「六華の護衛のはずが岳志の護衛になってきたわけだ」


 刹那は辰巳を気にした様子もなく淡々とした口調で言う。


「井上選手の護衛!?」


 辰巳がまたすっとんきょうな声を上げる。


「しーっ」


 刹那が人差し指を立てて言う。


「大騒ぎになっちゃうよ。全盛期を過ぎたとは言え岳志は有名人なんだから」


 辰巳は目を輝かせている。

 どうしよう。親父と俺の間の血縁関係をどうこいつに語ったものだろう。

 偽るのも躊躇われたが、誰にも告白したことがないだけに反応が怖かった。


「貴方も護衛の一人ね。岳志に会わせてあげる」


 そう言って先頭を歩き始めた刹那の後を、物凄い勢いで辰巳と翔吾が駆けていく。


「親父の護衛、か」


「不服?」


 愛が問う。

 いつになく喧嘩腰ではなかった。


「いや、なんか今更親子の時間与えられてもなって。親父は仕事に夢中で俺を置いてアメリカまで行っちゃったわけだし」


 そこに関してわだかまりがないわけではない。

 憤っているわけではない。

 ただ、今更深入りしないで欲しいししたくもないという微妙な抵抗感がある。


「仕事よ、仕事。大人を見返すんでしょ? 切り替えないと」


「けど、岳志に護衛なんて必要かなあ」


 そう言って近づいて来た人物に俺は目を丸くした。

 今は海外にいると訊いていた。

 ネットの騒動で何度も写真を見たことがある。


 親父の初恋の人、エイミー・キャロラインだった。


「とりあえず、愛、ヒールしたげて。私は警察呼ぶから」


 淡々とそう言うと、エイミーはパネルフォンを取り出し電話をかけ始めた。



つづく



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