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事件

 千紗は電話をかけると即座に一階に降りてきた。

 そして、顔を赤くしている面々を見て少し呆れたような表情になる。


「千紗、車出せるか?」


「オッケーイ。行き先は?」


「空港!」


「私も行くよ」


 アリスが声を上げる。


「アリスは安全な場所にいろよ」


「それって私に対してどうなの?」


 千紗が目を細めて言う。


「いいから、今日は大人のお祭りなんだから。些事は子供に任せろよな」


「任せられるわけないでしょ」


 いつの間にか来ていた刹那が呆れたように言う。


「保護者として私が着いていきます。その霊気って奴も確認したいしね」


「悪いなー、刹那。お前には頼りっぱなしだ」


 酔っ払ってぐだぐだになっている親父が苦笑交じりに言う。


「いつかどかんと返してもらうよ」


 笑ってそう言うと、刹那は家の外へと歩みだした。

 後を慌ててついていく。


 扉を開けたところで、刹那は言った。


「あ、こりゃ空港行くまでもないわ」


 刹那は淡々とした口調で言う。

 千紗も苦い顔になる。


「探知できた。意識的に感じるとわかる。魔力とは少し変わった――これが、霊気」


 親父が感じた霊気はあずきの家の傍まで着いてきていたということか?

 ギシカが拐われかけたこともあって、警戒心を抱く俺だった。


「俺、愛達迎えに行くよ! こっちに向かって移動してると思う!」


「そこまですることもない」


 刹那は、すぐそこの電柱の影を見た。


「いるわね、そこに」


 俺は息を呑んだ。

 探知をすると、確かにそこからは魔力のようなものが漂っているのがわかった。



つづく

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