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大きく……ならなかったな

 夜になると俺はあずき宅にアウラに無理やり連行された。

 パーティーは既に始まっており、出来上がったアリスが玄関に出迎えに来た。


「アリスも来てるんだ」


 俺は急にかしこまる。


「当然だよー。タッグ組んだ仲だもん」


 そういう特別感を出されると俺ちょっと嫉妬しちゃうな。

 そう思いつつも、部屋の中へと入っていく。


 酔い潰されて顔を真赤にした親父がソファーで横になっていた。


「ほんと、岳志君が帰ってくるなんてね」


 あずきが目に涙を浮かべていう。


「鬱陶しくなるにゃ」


 アリエルが珍しく辛辣に言う。


「何を言うか。我らが巨人軍の戦力じゃぞ」


 アウラが噛みつくがアリエルはするりと流した。

 顔を赤くしている六華に押されて、親父の前に立つ。

 親父が薄っすらと目を開けたので、俺は心臓が脈打つのを感じた。


「春武かぁ? お前、大きく……ならなかったな」


 率直すぎる意見に俺は思わず苦笑する。

 誰にでも自然と懐に入ってくるような態度。

 敵わないなと思う。


「誰かさんの遺伝だよ」


 親父はにっと微笑むと、俺の頭を撫でた。


「海外でもお前の試合の動画は見てたぞ。グリップはもうちょっと握りを深くしていい」


 そこから始まる野球談義。

 なんだ、男の親子なんてこんなものか。

 親父は実の両親と絶縁しているというが、それが稀な例なのかよくある話なのかはわからない。

 俺と親父は、野球で繋がっているらしい。


「俺、あんたと住む気はないからな」


「ああ、それは刹那に悪い」


 親父は不意に真面目な表情になって言った。

 わきまえているらしい。

 そのことに、俺は安堵した。


 なんだかんだで巨人に背番号三十一として登録された親父。

 今後の活躍が楽しみなような不安なような。

 もう四十過ぎ。鉄人とは言えピークは過ぎている。


 それでも、なんとかしてくれそうな期待感がこの人にはあった。

 親父はウトウトとしてきたらしく、再び目を瞑る。


「あんた達本当に野球の話ぐらいしかしないのねー」


 呆れたように言う六華だった。


「そういや、帰ってきて思ったことだがな」


 親父が口を開く。


「空港で変わった魔力を感じたんだけど、ありゃなんだ? 陰陽連の新技術か?」


 場の空気が一瞬で凍った。

 空港に向かわねば。俺は千紗の番号を電話帳から呼び出していた。



つづく

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