六華の尋問
千紗と共に駆けつけてきたのは、六華だった。
彼女は呼吸を整えることもせずに、ギシカに抱きついた。
「ごめんね、お母さんのせいで危険な目に合わせて」
「いや、六華さん。悲惨な目にあったのはこっちこっち」
そう言って地面に転がっている大人衆を指す。
「それで、内密にって?」
六華が、問う。
俺が返そうとしたが、その前に愛が説明した。
「魔力の使い方を教えて回ってる人がいるらしい。この子がその証言者」
そう言って、今は失神している少女を指す。
「喚くからちょっと春武に気絶させてもらったけど、ヒールすれば治るよ」
淡々とした口調でこんなことを言い出すのが愛の怖いところだ。
彼女の案に乗った俺も俺だが。
だって仕方がないではないか。あの喚きようでは通報されかねない。
「お願いできる?」
六華がギシカを離して言う。呼吸は既に整っていた。
愛は頷き、魔力を振る。
少女の目が、薄っすらと開いた。
「んん……」
「おはよう」
六華が微笑んで言う。
少女は目をまん丸にして言った。
「うわ、都知事!」
「人を化け物みたいに言わないの。貴女、魔力を使えるの?」
「魔力……霊力のこと?」
六華は少しきょとんとした表情になったが、即座に元の微笑み顔に戻り頷く。
「そうよ、霊力。誰に習ったの? 他に習った子はいるの?」
「先生に。私と辰巳は資質があるからって……」
「その人からなにか頼まれなかった?」
「お金とかはいらないって言ってたかな。道楽だって言ってたから」
「道楽、か」
六華は思案するように顎に手を当てる。
「急増する悪霊憑き。関係があるのかしら」
「あくりょう……つき……?」
今度は少女がきょとんとした表情になる番だった。
その視線が、俺を見て全力で見開かれる。
「化け物!」
「誰が化け物だ!」
「やめてー記憶消さんといてー!」
「騒ぐな! また失神させられたいか!」
「辰巳ー、助けてー!」
「まあまあ、落ち着いて」
六華が俺と少女の間に割って入る。
「その辰巳君って子も霊力、を使うのね?」
「うん、貴方達が霊力を使ってるみたいにね」
六華が目を見開く。
「だって、霊力を使ってるから春武だって岳志だって凄い選手なんだよね?」
六華は千紗を見た。
千紗は頷く。
「日常的にコントロールできるレベルまで仕上がってるってことですね」
「……事態は思ったより深刻だわ」
六華はそう呟くと、思案し始めた。
ブレイン二人が黙り込んだので、俺と愛は視線を合わせて肩を竦めた。
なんだかややこしいことになってきちゃったぞ。
つづく




