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狙われるのは……

 叔母である六華は都知事だ。

 色々な改革を成し遂げ、色々な人間に狙われているという。

 週刊誌記者から政敵から利害関係が不一致となる相手まで色々と。


 それを守らなければならないのが今の俺の仕事だ。

 とりあえずは千紗に普段探知させておいていざとなれば縮地で現場に辿り着けば良い。

 刹那仕込みの縮地ならここからあっという間に都庁へ行ける。


 電話がないということは平和なことだ。

 そんなこんなで一日が過ぎた。


「辰巳のチームってどこだろ」


 帰りの時間、愛の教室に出向き声を掛ける。

 愛は迷惑そうに俺を見ると、ちょっとこいというジェスチャーで廊下の奥を示した。


 背後からおお~というどよめきが起こる。


「なんだなんだ? 俺、なんかしたか?」


「ホント馬鹿ね。男が女を呼びに来たら学校みたいな小さな社会じゃ大事なのよ」


「けど、お前だって俺のクラスに……」


「先輩がいたからね」


 やれやれ、とばかりに言う愛。

 どうやら不味いことをしたらしい。


「で、この前の子のチームだっけ?」


 愛が睨めつけるように言う。


「ああ。知る方法はないかなって」


「ポケットのパネルフォンはお飾り?」


 言われてみればそれもそうだ。検索すれば辰巳の所属チームぐらい書いてあるだろう。


「ありがと、検索してみるわ。お前は部活か?」


「そうよ。けど野球馬鹿のあんたにゃ興味ないでしょ」


「応援でお世話になるかもしれないし……」


「ともかく、迷惑だから学校で話しかけないで」


 自分は一方的に人のクラスに来て馬鹿犬呼ばわりしていった癖に。

 難しい歳頃という奴か。


「春武、帰るの? 一緒に帰ろ」


 いつの間にか真横にいたギシカが言ったものだから、俺も愛も飛び上がった。


「気配けして近づくな!」


 思わず怒鳴る。


「私そんなに影薄い?」


 申し訳無さげに言うギシカだった。

 これが連続殺人犯相手に大立ち回りした人物なのだからわからないものだ。


 俺はギシカと一緒に帰ることにした。

 俺はパネルフォンを弄りつつ辰巳の情報を探す。

 ギシカはその数歩後をついてくる。


 興味深い記事に出会った。

 才能あふれる選手、再起不能からの復活。

 辰巳を取り上げた記事だ。


 再起不能?

 そんな疑問符がつく記事だ。


 その時のことだった。

 けたたましい音を立てて車が近づいてくる。

 その扉が開くと、一瞬で中から出た手がギシカを拐って行った。


 一秒遅れて気づく。

 六華が狙われやすいということは、その娘であるギシカも同様だ。

 失念していた。


 俺は縮地を使うと、車の後を追い始めた。


(頼むぞ~、生きててくれよ……)


 主に、拐った側が。



つづく

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