再会
「じゃあ、元気に暮らしなさいよ! 後、あずきさんの言う事をきちんと聴くこと!」
刹那がそう言って改札の向こう側で手をふる。
俺も手をふると、それに背を向けて歩み始めた。
正直、少しばかりの心細さがあった。
東京に通い慣れていると言ってもホームは京都だ。
それが、東京に変わる。
刹那のもとを離れるのも初めてということになる。
どうなるんだろう。
そんな不安がある。
その思いも知らず、新幹線の窓の景色は見慣れた京都を離れていった。
しばらくスマートフォンとBluetoothのイヤホンを使って時間を潰す。
あっという間に東京の景色が目に入ってきた。
こうなると薄情なもので、高揚感が胸に湧いてくる。
これから毎日アリスの顔を見ることが出来る。
それだけで最高だ。
東京駅に着いて改札を抜けると、見知った顔が三人。
「おっす!」
と千紗。
「……時間通りで良かった」
と小さな声でギシカ。
「まあここは時間を潰すには悪くない場所だからね」
愛が居高々に言う。
お上りさんいらっしゃいとでも言いたげだ。
「悪霊憑きのパターンを覚えたよ。これからはそいつらも探知出来る」
と言う千紗は心強い。
「チームに加えた甲斐があるよ」
俺は微笑んで千紗とハイタッチした。
再会は微笑みとともにあった。
まずはアリスに挨拶だ。
ちなみに俺の住居はあずきが提供してくれることになっている。
あずきの料理はボリュームがあるのだが、男の子が来ると言うことで張り切っているらしい。
それが一抹の不安だった。
+++
改札から出てきた春武を見て、一組の少年少女が目を見張った。
「ひえー本当にそっくりだ。生き写しだねえ」
少女が口元に手をやって言う。
「な、似てるだろ?」
少年がニヤけながら返す。
「投げても打っても頭一つ抜けた存在だよ。俺も負けちゃいないがな」
「やっぱりあいつもやってるのかな?」
少女が上目遣いに少年を見て、周りに聞かれないように恐る恐る問う。
「霊的ドーピング」
「さあな。まあ、これから楽しくなるぜ。派手に洗礼を浴びせてやろうじゃないか」
そう言って、少年は満足げに微笑むのだった。
つづく




