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悪魔の仕業?

 俺達は警察の事情徴収から開放されて夕方時の町並みに放り出されていた。

 全員が放心している。

 人間の死体なんて初めて見た。しかもグロ系。


 全員が話題を求めるように沈黙している。


「……人間の仕業じゃないよね」


 千紗がぽつり、と言う。


「だな」


 俺も頷く。


「そんなに酷かったの?」


 愛が恐る恐る、と言った様子で聞く。


「腹部の中がなかった。内臓だけ綺麗に食った感じだ」


「人間の仕業じゃないよね」


 千紗は煙草の箱を取り出すと、一本取り出しかけて、喫煙所が近くにないことを思い出したのかしまう。


「……じゃああいつか?」


「まさか」


「けど悪魔つったらあいつしかいないぜ?」


「……一応当たってみるか」


 千紗がパネルフォンを取り出して電話をかける。

 数コールで相手は電話に出た。

 十数秒の会話で事は済んだ。


「原宿で晩御飯がてら会おうってことになった」


「うし、行くか」


 俺達は原宿へと向かった。

 若者の町。

 相変わらず何処へ言っても祭りのような人の多さだ。


 その中で一軒の店に入る。

 相手は既に店の中で待っていた。


 ちまっと長椅子に座る小柄な少女。

 その肩を千紗は抱き寄せる。


「よ、久々」


「久々だね。春武なんて特に」


 か細いソプラノで言う。


「でさ、本題なんだけど、お前最近人喰った?」


 俺の先制ストレートに少女は目を白黒させた。


「は? は? はぁ!?」


「動揺するのが怪しい」


 愛が淡々とした口調で言う。


「ちょっと待って。私は確かに悪魔とのハーフだけど食人衝動はないよ。むしろグロくて生の鶏とかも食えない程」


「じゃあ焼いて喰ったのか」


「酷い濡れ衣だ」


 憤慨したように少女は肩を怒らせる。

 井上ギシカ。ギシニルと六華の子供で、悪魔と人間のハーフだ。


「私じゃないよ。それなら私が人界に悪魔が来てないか探知するよ」


「探知は済ませている。悪魔の気配はあんただけだった」


 千紗がこともなさ下に言う。


「じゃあ誰が犯人なんだろう……」


 ギシカは顎に手を当てて考え込む。


「面白くなってきたと思わないか」


 俺は口を開いていた。

 皆が俺に注目する。


「大人達は確かに実績を積んできた。俺達を半人前するのもわかる。けど、この事件を俺達だけで解決したら、その時は俺達も一人前として認められるんじゃないか?」


 全員が黙り込んだ。

 各々、思うところはあるのだろう。


「乗った」


 愛が言う。


「私も」


 ギシカが言う。

 千紗が溜め息を吐く。


「保護者は要るわね」


「じゃあ、話は決まりだ。俺達で大人の鼻を明かしてやろうじゃないか」


「で、策はあるの?」


 愛の言葉に、俺は黙り込んだ。

 策なんてなにもなかった。



つづく

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