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結局は仲良し

「では検分役は……なんで私が。まあ、愛・キャロラインと千紗が務めます」


「ごめんね愛ちゃん。愛ちゃんがいないとヒーラー不在だから」


「子供のままごとで怪我なんて馬鹿らしいわ」


 大学生の千紗ならわかるが、俺より一つ年下の癖に口数の減らない奴である。

 数メートル先ではアリスが入念にストレッチをしていた。


「良いかー?」


 赤い目がこちらを向く。


「いいよ。いつでもおいで」


 低く掠れた官能すら感じさせる囁き声。

 俺は脳天を貫かれたような気分になった。


 作戦は変わらず。初手縮地による一撃決着。

 俺は縮地を使い、アリスの傍に接近し、既のところで踏みとどまった。


「バレたか」


 歌うように言って身を翻すとアリスは宙を飛ぶ。

 危なかった。見えづらい足元に血の糸が敷かれていた。

 気づかずに突進していたら今頃足が斬られていただろう。


「ブラッドティアーズ!」


 アリスが高々と叫び血でできた矢の雨を降らす。

 それを俺は、盾を呼び出すとそれに隠れて防御した。


 そのまま跳躍する。


「あはっ」


 アリスは上機嫌に言うと空中で翻り、こちらの脇腹に蹴りを放つ。

 落下が始まる。

 ブラッドティアーズが肩を、太腿を、腹を貫く。


 そして俺は、立っているのも困難になった。


「相変わらずね」


 愛が呆れたように言う。

 軽いなにかがのしかかってきたと思ったら、それはアリスだった。


「まいった、って言いなよ。私、素直な子が方が好きだな」


 俺はアリスを睨みつけると、見つめ返され、照れて目を逸らし、そして俯いて下唇を出した。


「まいった」


「あー、終わり終わり」


 ぼやくように言って愛が近づいてくると、俺にヒールをかける。

 一瞬で体が全快する。


「アリス、もう一戦! もう一戦だ!」


「やだよ。私本当は暴力嫌いだもん」


 大人の外見で、子供みたいな声音で言う。


「それより、明日はアヒルボートに行こうよ。パン屋は潰れちゃったけどクレープ屋見つけたんだ」


「クレープ屋ぁ? 味は確かなのかよ」


「私のバイト先」


 上機嫌に言うアリスである。


「二人で?」


「勿論」


「嬉しい? 良かったね」


 愛がどうでも良さげに声をかけてくる。


「うるっせえなあ愛!」


「まあいつもこうなるわよね」


 千紗は達観したような表情で言った。

 六階堂春武。目下の目標は年上のお姉さんアリスに戦闘で勝利し、交際してもらうこと。

 十四才のちっぽけな夢だった。



つづく

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