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異変

 俺が六華を、エイミーがアリエルを抱えて移動する。

 ギシニルとヴァイスはやや遅れつつもついてくる。


「しかしシュヴァイチェの死んだ場所に固執するのは何故だ?」


 ヴァイスの言葉を俺は一瞬理解できなかった。

 だが、すぐ言いたいことがわかった。


「確かにそうだ。あいつは魔界で呂布や名だたる武将を復活させた。呂布に魔界は関係ないはずだ」


「空間かもにゃ~」


 アリエルが言う。


「仮説を立てるならば、異界では一時的な復元が出来る。しかし完全復活させるためには遺体の残る土地にいかねばならないとかにゃ」


 なるほど。尤もな考察だったので俺もヴァイスも黙り込んだ。


「急ぐぞ」


 シュヴァイチェの完全復活だけはどう足掻いても止めねばならない。

 ヴァイスとギシニルがやや遅れつつある。

 俺達は速度を上げて前進していた。


「それにしてもエイミー。その身体能力。なんで隠してたんだ?」


「皆の元通りの成長を促すため、かな」


 なんだろう。意味深だが霧を掴んだような返答だ。

 そんな場合じゃないか。

 俺は足に魔力を込めて、縮地を繰り返した。

 そのうち、エイミーすら置き去りにした。



+++



 パーカーの男。

 西藤圭介は足を止めた。


 肉体に宿るシュヴァイツェは疑問符を抱く。

 何故こいつは足を止めた?

 自分は今、再生の地目指して最後の締めくくりを行っているところではないか。


(進め)


 低い声で念じる。

 足が浮き上がり、次の瞬間元の地面を踏む。


「嫌だ!」


 パーカーの男は叫んでいた。

 自分の目的は死んだ恋人の蘇生一つ。

 それ以外の寄り道なんかしたくはないとでも言いたげだ。


 そして、体は元来た方に歩き始めた。

 彼女は圭介にとって人生でただ一つの光だった。

 否定されてきた圭介を受け入れてくれた、たった一つの存在。


 無条件で愛してくれた存在。

 それがなければ、こんな計画に付き合いなどしなかっただろう。

 圭介は抗おうとした。


 模造創世石が脈動した。


 ―ードクン


 圭介は目を見開く。

 その自我は急速に小さくなっていく。


「俺は……消えるのか? 否定され続け、こんな何処とも知らない場所で、一人で」


(周囲に翻弄され続けた哀れな魂よ。最後に意味を得た。俺を復活させるという意味をな)


「そんなのは……嫌だ!」


 圭介が魔力を使い始める。模造創世石を侵食し返そうとする。


(ば、馬鹿な……!)


 模造創世石に宿っていたシュヴァイチェの意識は焦っていた。

 彼がここまで抵抗するとは予想外だ。


 眼の前に降り立つ、岳志と六華。

 圭介は完全に体のコントロールを取り返し、臨戦態勢を取った。



つづく

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