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長老ギシニル

 人界と異界の繋がりが絶たれてからと言うもの、ギシニルは平和に暮らしていた。

 なにせ、暴君シュヴァイチェを討った大英雄だ。

 瞬く間に長老に抜擢され、本人も合わないと思いつつも管理をこなしている。


 そんなある日のことだった。

 強力な気配を察知して、ギシニルは側近に言い放った。


「直ちに門付近の住民を避難させろ!」


「危機……ですか?」


「ああ、俺が出るしかあるまい」


 そう言ってギシニルは席から立ち上がる。


「俺になにかあったら後はお前に任せる」


「それならば私が前線へ!」


「お前では敵うまい。俺でも勝てるか正直疑問なのだ」


 側近の表情がみるみる青ざめていく。


「避難、頼んだ」


 そう言い捨てて颯爽とその場を去ると、ギシニルは人界との門の前に立った。

 この門は人界で言うと富士山とかいう活火山の中に隠れている。

 そのマグマを超えて近づいてくる生命体。


 魔族ならわかる。魔族の肉体能力は人間を有に凌駕する。

 しかし、やってくるのは一体。

 ギシニルの頬に汗が一筋流れ落ちた。


 避難までの時間を稼げられれば良い。

 後は岳志がやってくれる。

 そんな期待感があった。


 自分の生死は、この緊急事態に置いては些細なことだ。



+++



 パーカーの男は富士山のマグマに突入しつつ違和感を覚えていた。

 何故自分はこんな地に向かっているのだろう。


 自分が蘇生したいのは別の人のはずだ。そっして蘇生の力は得た。

 何故真っ先に向かうのがこの地なのか。


 自分でもわからない。衝動に突き動かされているというのが正しい。

 ふと疑問に思う。

 この模造創世石の一連の攻防。

 あんな危険な綱渡り、本当に自分がしてきたのだろうか。してくる勇気は合ったのだろうか。


 疑問のまま、門の前に着いた。

 眼の前のことに集中し、疑問は後回しにする。

 軽く押すと、門と手が溶け合った。

 模造創世石の集合体が、脈動を打っている。



つづく

昨日は投稿休んですいませんでした。

割烹、X、前話のあとがき更新で更新がない旨は告知したのですが伝わったでしょうか?

今日はお詫びとして二話投稿させていただきます。

物語は章のクライマックス。ぜひお付き合いください。

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