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エイミー奮闘

 エイミーとパーカーの男の肉弾戦が始まった。

 アリエルはそれを眺めていることしかできなかった。


 迂闊に炎を使ってしまえばエイミーまで巻き込んでしまう。

 魔術系列に長けた天使であるアリエルには手出しできぬ範疇だ。


 どちらも、速い。

 時間を操っているかのような速度。

 目視するのも難しい。


 そのうち、エイミーの肘打ちが相手の腹部に突き刺さり、相手は唾液を吐きながら吹き飛んだ。

 駅の柱に叩きつけられ、骨の折れる音が聞こえる。


(今にゃ!)


 そう思い、手を翳し、渾身の炎を放とうとした時のことだった。

 パーカーの男の周辺が、ぐにゃりと歪んだ。

 そして、パーカーの男の思念が、周囲を侵食し始めた。


 その景色は、一面の墓の光景。

 唖然としてそれを見る。

 そして動作が遅れたと気づいた時には、その空間は広がっていた。


 エイミーが咄嗟にアリエルを抱きかかえる。

 魔力を全開にしてアリエルを保護する。


(これじゃ足手まといにゃ)


 忸怩たる思いを抱いているうちに、周囲は墓場へと景色を変えていた。


「……これが貴方の理想の景色? 理解しがたいわ」


 エイミーの言葉に、パーカーの男はめり込んだ柱から開放され地面に崩れ落ちると、再生を始めた。

 折れた骨が、元通りに戻る。


「これからだよ、エイミー・キャロライン」


 パーカーの男の唇の端が、僅かに上を向いた。

 その次の瞬間、墓から骨壺が飛び出し、人間の形を取り始めた。

 彼らは肉を取り戻し、衣装を取り戻し、鎧甲冑に身を包む。

 そこにいたのは武士の大軍だった。


「俺が望むのは、死者の復活。この力だ」


 そう言って、パーカーの男は高笑いを始めた。

 流石世界を書き換える力。滅茶苦茶だ。

 エイミーが小声で言う。


「タフさを加味すれば、岳志を超えてるかも……」


 アリエルは目を見開く。

 こちらのジョーカー岳志。

 それを上回るとなれば、これはシュヴァイチェ並の脅威だ。



つづく

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