ここは私に任せて
駅の構内に入ると、筋骨隆々とした男女が周囲の人間を襲っていた。
彼らはまるで人々を紙のように千切っていく。
その瞳には理性がない。
異常なのは、その事態を誰も意に介していないことだ。
会話相手が殺されても、その相手がまだそこにいるかのように独り言を口にしながら歩いていく。
「ここはブランクがある私に任せて」
そう言って、六華は神殺しの長剣を鞘から抜いた。
「……ブランク明けで大丈夫?」
「身体強化されたとは言えど一般人だ。私なら対処できる」
エイミーとアリエルは視線を交わした。
今は一瞬でも惜しい。
二人は弾かれたように駆け出した。
「任せた!」
駅の深部へと進んでいく。
この人の川が別れた道を真っ直ぐに進む。
そのうち、高笑いしている男と遭遇した。
パーカーの男。
岳志が言っていた模造創世石の収集人。
「おや、早かったな」
パーカーのフードから辛うじて見える口元の端が上がる。
「随分多くの模造創世石を集めたようね」
エイミーは彼を睨みつけつつ言う。
「ああ、集めた、そして一つにした。今の俺の力は、神の域に達している」
「そっちが神なら」
「こっちも神格にゃ」
「面白い」
そう言うと、パーカーの男は消え、次の瞬間エイミーの眼前に迫っていた。
縮地。
そう思う間もなく格闘戦が始まる。
アリエルは待つ。
彼に魔法を叩き込める瞬間を。
今の状況ではエイミーを巻き込んでしまうのだろう。
つづく




