映画の一場面のような
「なんか映画みたいだね」
肩を寄せ合って俺の掌に灯った炎で暖をとっていると、エイミーがポツリと呟いた。
「映画みたいに非日常って点じゃ同意だ」
今回の件に関わる模造創世石。それは世界を書き換える力を持っている。
それを使えば、現実なんてものは捻じ曲げられて、後に残るのは非日常だ。
何度も掻い潜ってきた事態だった。
「私の映画でもあったな。ね、見てくれた?」
「ああ。お前がトンデモ刑事の娘役で出てた奴だろ。強盗に脅されてた」
「そうそう、そんな感じ」
エイミーは嬉しそうに苦笑する。
「どうしたもんかな、この状況」
「気配が濃厚すぎてねえ」
「これはかなり一体化が進んでるな」
確かに、周囲には模造創世石の気配が満ちている。
しかしそれは濃すぎると、根源がわからないという代物なのだ。
部屋中が異臭に包まれていると自分のせいだろうか、と思うアレ。
「まあ、岳志を私のヒーロー役に選んだその目は褒めてあげよう」
「お前がわざわざ国を跨いで巻き込んだんじゃんかよ」
それにしてもアメリカまで届く模造創世石の影響か。
もしかすると、それは既に世界を覆っていて、エイミーを殺そうとしているのかもしれない。
そんな強い思念、誰が?
思い当たるフシが、一つあった。
「前にお前が刑事事件にした被害あったよな」
「……あ、そう言えばあったね。すっかり忘れてた」
「あいつじゃないか? あの時の加害者」
「けどあの子、北陸住みでしょ」
「アメリカまで影響が届くんだぜ。北陸から関東まではもう覆われてるだろうよ」
「それもそうか」
納得したように頷くエイミー。
その表情がふっと緩む。
「もう少しこうさせて」
そう言って肩をくっつけてくる。
昔と変わらないなあこいつ。
変わってくれないと困るんだけどなあ。
俺はそう思いつつも、悪くないと思っていた。
幼馴染同士、いつまでも友情が続けば良い。
そう思った。
十分程そうしていただろうか。
エイミーは立ち上がった。
「行くか、決戦」
「おうよ」
俺はエイミーを抱き上げると、跳躍した。
一路、北陸へ。
つづく




