トラブルに次ぐトラブル
俺達はハイジャック犯を無力化して空港に着いた後、森の中に来ていた。
人里に入れば危険度が増すし、何より周囲を巻き込んでしまうという懸念があった。
静寂が周囲を包んでいる。
「静かだね」
ポツリ、とエイミーが話し始めた。
「こんなの久しぶりかも」
そう言ってエイミーは苦笑する。
「ハリウッドスターは忙しいか」
「岳志だってそうなんじゃないの? 日本じゃヒーローでしょ。海外までその噂は聞こえてるよ」
「俺はバラエティとか出ないからなあ。オフシーズンは気楽に過ごしてるよ」
「そっか。すっかりプロだね」
「お前こそ」
お互い、苦笑する。
その時、妙な音が周囲に響き始めた。
サクッサクッサクッ。
地面を掘る音。
「なんだろう」
エイミーが囁く。
「我感せず」
俺はぼやくように言う。
まーた始まったかといった感じ。
「けど気になるよ」
そう言ってエイミーは立ち上がると、音のする方へ向かっていった。
なんなんだその責任感。
俺も見習わなきゃな、と思いつつ、物憂い思いで立ち上がった。
そして、硬直しているエイミーと遭遇した。
そこには、死体と、それを隠そうと穴を掘る男がいた。
「生かしちゃおけねえ!」
そう言うと、男は俺達に向かって包丁を抱えて襲いかかってきた。
「またかよ……」
そろそろ慣れつつあったので縮地で接近し、刃物を奪う。
そしてみぞおちを撫でるように殴って気絶させた。
「森の中に来てもこの調子か」
呆れてしまう。本格的にエイミーを殺しに来ている。
「岳志は王子様って感じで格好良いなあ」
「お前状況わかってるのかよ……」
上機嫌に言うエイミーに呆れる。
まあ、確かにあの最終決戦を経れば命の危機のハードルが上がってしまうのは致し方ないが。
「まあ、流石にこれ以上は……」
エイミーがそう言った時、地面が揺れ始めた。
そして地割れが起こり、エイミーはその中に落下していった。
「おいおいおい……」
呆れ混じりに裂け目を見下ろす。
中空に浮いたエイミーが腕を組んで唸っていた。
「これは本格的にどうにかしないといけないかも」
まったくだ。
こんな漫画みたいにポンポントラブルが起こったらキリがないのだ。
つづく




