俺達は上書きされているってことか?
俺は妻を残して、公園でアリエルと合流していた。
「ちょっと刹那に確認してみた」
「どうだったにゃ?」
アリエルがずいっとこちらを覗き込んでくる。
「あっちはもう二日後の日付だってよ」
「重症だにゃあ……」
アリエルは身を引いて、頭を抑える。
「つまり関東地方だけが時間の流れが上書きされてる。これって俺達は上書きされてるってことか?」
「もうその範囲にいるってことだにゃ。だってお前、この状況を気づかなかったんにゃろ?」
「確かに……」
未だに神秘のペンダントを装着していないのもおかしなことだ。
これはレーダーであり防壁のようなものなのに。
「なんか抵抗感あるんだよな、神秘のペンダントつけるの」
「侵食されてるにゃあ……」
アリエルは悔しげに地面を蹴る。
「一旦クーポンの世界に逃げるにゃ。急ぐんにゃよ。この状況じゃいつ天界にバレるかわかんないにゃ」
その末に待っているのは模造創世石を使って世界を書き換えた人間への制裁。
それを思えば、事は一刻を争った。
俺はクーポンの世界を展開した。
白一色の世界に迷い込む。
コーヒーを飲んだように段々と意識がすっきりとしていくのを感じた。
「やっぱおかしかったな」
「だにゃ」
アリエルは大きく頷く。
俺は神秘のペンダントをポケットから出すと、首に巻いた。
その瞬間、白い世界に歪みが生まれる。
そして、俺は魔力を全開にして、白い世界を吹き飛ばした。
残ったのは元の公園だ。
「もうかなり侵食されてるな。はっきりと濃厚な気配だ。それ故に特定しづらい」
「よほど夢見人か切迫してるか。明日が来ることを拒んでる人間がいる」
「……病人か老人かはたまた受験生か」
「そういうシーズンにゃねえ」
俺は月夜を見上げた。
京都では既に二日後の日付だという。
関東だけが隔離されている状態にあった。
つづく




