変な感覚
なんだか記憶が曖昧だ。
ここ最近既視感に囚われる事が多い。
あすけんに自分で入力したはずの速歩き二十分もいつ行ったのか寝る前には曖昧だ。
コンビニに出かけた記憶は朧気なのだが、それが酷く遠い。
一日を極限に引き伸ばされたような錯覚。
なんなんだろう、これは。
昼食に妻と一緒にサンドウィッチを食べたのも昨日や二日前のことのように思える。
寝る前に妻が言った。
「ねえ、最近時間が流れるのが遅くない?」
ぼんやりとしていたところにビンタされたような衝撃。
我に返ったとはこのことだ。
「遅いよな?」
「うん、遅い」
妻が戸惑うように頷く。
スマートフォンを起動して検索するとこんな声が上がっていた。
『今日の一日はやけに長かった』
『一日長いよね』
『体感時間が遅い一日だった。なんかニュースになるようなこともなかったからかな?』
『立ち仕事が延々と続いて死ぬかと思った』
『うちの今日の成績は日本一かもしれない』
『なんかサッカーが野球みたいなスコアになってたけどそれも関係してるのかな?』
やはり一日が長くなっている。
俺はアリエルに電話をかけた。
「おかしいよな?」
「……やっぱおかしいにゃね」
そのやり取りだけで把握できた。
時間の流れが、遅くなっている。
つづく




