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なんだ、こんなことか

『行く』


 そうとだけ言って俺は店を出た。

 模造創世石の気配は接近しつつある。

 世界を侵食しながら進みつつある。


 あれにアリエルが触れるのは危ない。直感的にそうと悟った。

 店をゆっくりと出た途端に首都の人混みを掻き分けて駆けていく。

 普段はダイヤモンドを駆ける足でアスファルトの地面を踏み抜いていく。


 あっという間に距離は縮まってきた。

 人混みの中で立ち止まる。

 ここからは、気配が強すぎてわからない。


 周囲を見回して、注意深く視線で追う。

 誰がこの粗筋を書いている主なのかを。


 そして、ある一人の見覚えのある顔を見つけた。


(あいつ、俺と刹那がハグした時も――!)


 いた。

 確かにいた。

 あの角度から写真を撮るならあいつしかいないと思って脳裏に焼き付いていた。


 その顔が、いる。

 そうか、そういうことか。

 アリエルの熱愛を望んでいる者。それは彼女の恋人になりたい者だけではない。

 それを記事に乗せて金を稼ぐジャーナリストだ。


 最高のマッチポンプ。

 自分で火をつけてそれを写真に収めるようなもの。

 俺はその男の肩を掴んで言っていた。


「やってくれたじゃねえか」


 刹那の件では散々酷い思いをしたものだった。

 男は、俺をまじまじと見て、呆気にとられたような表情になると逃げ出そうとした。


「逃がすものかよ!」


 そう叫んで、俺は決闘のクーポンを起動していた。

 周囲が白い世界に染まっていく。


 さて、件のジャーナリストだが。

 模造創世石との一体化はかなり進んでいるようであった。

 それは、世界を書き換える力だ。



つづく

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