エスコート
その夜、エイミーは一晩中アリスにつきっきりだった。
俺が見ているからと言っても離れやしない。
手を握って悔いるように離れやしない。
「懺悔なら起きた時にすりゃいい。お前がやったことは至って普通の十七歳の少女の所業だよ」
「けど、残酷な所業だわ」
エイミーは淡々とした口調で返す。
「ったく」
「岳志こそ戻れば良いじゃない。今はもう、貴方は私の彼氏じゃないんだから」
「戦友であり、親友だろ。お前がボロボロになってるのに一人で背負わせとけるかよ。それに、当面俺は暇人だ」
「ふふ、ありがとう」
エイミーが笑ったのは数時間ぶりな気がする。
それを聞いて、俺も少し安堵した。
朝がやってきた。
俺がカーテンを開けると、アリスが目を覚ます。
アリスは自分の手を握っているエイミーに気づき、腹を触り、そして泣きながら抱きつく。
後は英語でやたらめったら喚いていたが、謝罪していたのはわかった。
「ごめんね。ごめんね、アリス」
そう言って、エイミーは何度も、何度も、アリスの背中を撫でた。
雨降って地固まるか。
俺はそれを微笑ましい気持ちで眺めつつ、アリスが日光が苦手なのを思い出してカーテンを閉めた。
朝ご飯、慌ただしい勢いで皆が朝食を平らげていく。
それをアリスはきょとんとした表情で眺めていく。
食事には手を付けていない。そう言えば、食欲がないって言ってたっけ。
「特殊能力キャンセルの光は使わない方がいいのね?」
エイミーが確認するように言う。
「本体ごと浄化しちゃう可能性があるにゃー」
「問題外ね……」
エイミーは苦い顔で言いつつベーコンエッグ二枚を一気に頬張る。
「一日、俺とアリエルで対策をこうじてみる。上にも相談し辛い件ゆえな。エイミー嬢は仕事に専念してくれ」
ヒョウンが顎を撫でながら言う。
なるほど。彼らの上司は神。悪魔を匿ったとは流石に言い辛いだろう。
「それじゃ、アリスは今日なにをしたい?」
エイミーは、アリスの顔を覗き込んで言う。
アリスは気恥ずかしげに俯いて左右に視線を散らすと、そのうち恐る恐る言った。
「岳志サンが、お姉ちゃんヲエスコートシた場所に連れてっテホシイ」
それって過去のエイミーと再びデートするってこと?
なんか周囲から見えない圧が俺に降り注いでいた。
六華はまたか、と言いたげな不機嫌顔。
雛子は呆れた、とばかりのつまらなさげな表情。
紗理奈とアリエルは面白くなってきたと調子に乗った表情。
肝心の遥はというと涼しい表情だった。
それで、少し救われた。
「じゃ、岳志、よろしくね。私の戦友にして親友」
エイミーは笑顔で言った。
つづく




