悪魔の弱点
この前の河川敷で、俺達は五対三で向かい合った。
こちらは俺、ヒョウン、エイミー、六華、アリエル。
相手は青年姿の悪魔三体。
三体はいずれも涎を垂らさんばかりの表情をしている。
「少年」
ヒョウンが口を開く。
「お前は前回随分と苦戦したようだな」
「ああ。奥の手まで使ってようやくと言った感じだった」
「なら、教えてやろう。悪魔退治の方法という奴を」
「いや、大丈夫だ」
「ほう?」
俺の言葉に、ヒョウンは戸惑うような表情になった。
「考えてみればわかることだった。悪魔の弱点。俺にもわかった」
ヒョウンはしばらく俺の表情を眺めていたが、そのうち苦笑した。
「いつの間にか越えたかもしれんな。俺をも」
それは買いかぶり過ぎだと思う。ヒョウンの技量にはまだまだ及ばない。
「このままじゃ人数差でこちらが有利だ。一対一で戦ってやる。誰か一人挑んでくる勇気がある奴はあるか」
俺は一歩前に出て言う。
悪魔達はニヤニヤしている。
「俺達はこの人数差でも構わないが?」
「俺はお前達の大将格の魔界六団騎とやらの一角を倒したが、知らないのか?」
相手達が形相を変えた。
こそこそと相談をし、一体が前に出る。
「俺がやろう。イノウエタケシ。お前を喰えば俺も魔界六団騎の新たな一角だ」
「その意気や良し」
決闘のクーポンを起動する。
その瞬間、周囲が白い世界に包まれた。
こうすることで、目撃者を気にせず戦える。
俺は退魔の双刀を両手に持った。
「いくぞおおおお」
叫んで、涎を振りまきながら相手が飛びかかってくる。
俺は縮地を使って、即座に相手に切りかかった。
一瞬である一点を断つ。
その次の瞬間、相手は動きを止めて倒れ伏した。
その一点とは、首。
胴と思考を司る頭が切り離されば、いかに再生能力があろうともどうにもならないというわけだ。
「見事!」
ヒョウンが言って、残りの二体に飛びかかる。
そして一瞬で二体を斬り伏せた。
「それにしても、前回は魔界の団長格。今回は雑魚か……」
ヒョウンは顎を撫でる。
「徐々に魔界と地上の距離は近づいてきているのかもしれない」
ヒョウンの一言に、俺はゾッとした。
「私の出番なかったんだけど」
退魔の長剣を片手に持った六華が不満げに言ったので、俺は気が抜けて苦笑した。
つづく




