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割れる世界

「残念だが今回はお前の相手をまともにしているつもりはない」


 シュヴァイチェはそう真顔で言う。

 その上空に、太陽のように巨大な炎が現れた。


 女神の上空にも瞬時に巨大な炎が現れる。

 シュヴァイチェは唇の片端を持ち上げる。


「この炎は独特でな。放った瞬間分裂し四方八方に飛び散る。全て相殺するにはお前の技術を総動員して一時集中するしかないぞ」


 女神の頬に一筋汗が流れた。

 それはつまり、数秒間シュヴァイチェを自由にすること。

 対応策を考える間もなく、シュヴァイチェの炎は放たれた。

 女神はそれに突進し、聖なる光で炎を包んだ。


 高笑いし、シュヴァイチェはその横を通り過ぎる。そして、窓からエイミー邸に突入する。

 アリエルが腰を上げ、手を掲げる。


 シュヴァイチェは唇の片端を上げた。


「お前の姉、エリセルは良い操り人形だったぞ」


 アリエルの目が限界まで見開かれる。


「お前、お姉ちゃんの……」


「甘い!」


 あからさまに隙ができた。

 その隙にシュヴァイチェはアリエルの頬に拳を叩き込んでいた。

 アリエルは吹き飛び、壁に叩きつけられる。


 そして、シュヴァイチェは念願の、神秘の道具の眼前にいた。

 垂涎の思いだった。

 神秘の盾が、そこにある。


 安っぽい結界を容易く解くと、触れる。

 手が、焼けた。

 神性特攻。

 それがこの盾の特性。


「そうか、神である俺を拒絶するか、神秘の盾よ。まあ、いい」


 そう言うと、神秘の盾に触れたまま、シュヴァイチェは念じた。

 アリエルが体勢を整え、フレイムヴォルケイノを放つ、

 女神が窓から入ってくる。

 それらが着弾する寸前に、シュヴァイチェはワープでその場から消えていた。


 現れたのは富士山火口。

 その場から、そのまま神秘の盾を落とす。

 神秘の盾は火口に落ち、そのまま沈んでいった。


(まだか……)


 一秒が一分にも感じた。

 一日千秋の思いでその瞬間を待つ。

 そして、その瞬間はやって来た。


 ピキリ、と結界が破れる音がした。


 それは、魔界と人間界の仕切りが割れる音。

 富士山の上空に暗雲が立ち込める。


「やったぞ、ついにやったぞ!」


 シュヴァイチェは高笑いすると、富士山の火口に向かって飛び込んでいった。

 その日、魔界と人間界は繋がった。

 それは、強靭な肉体を持つ悪魔が人間界に侵入することが可能になったということだった。



つづく

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