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神の雷

 体が軽くなった。

 あかねに貸した魔力が帰ってきたということだろう。

 さっきスマートフォンが鳴っていたことも考えると、あかねの方はミッションをクリアしたと見える。


 そう思うと、心も軽くなってきた。


「ここからは全力で行くぜ」


 シュヴァイチェは唇の片端を持ち上げる。


「さっきまでが手加減だったとでも?」


「ああ、そうさ!」


 縮地で相手との距離を一瞬で消す。

 急所への一撃を相手の双刀が弾く。

 その隙に脇腹に蹴り。


 肉弾戦と剣戟の混合攻撃。

 実戦の中で身についた俺の我流の戦法。

 相手は唾を吐く。

 そしてその首に、俺はもう片方の短刀を突き刺そうとした。


 緑色の光が膨れ上がる。

 危ない、と思い、魔術耐性のある鎧を呼び出す。

 吹き飛ばされた。

 風の魔術だ。

 それは、俺の後方を底が見えないぐらいえぐり取っていた。


 やはり、術を使わせたら危なかった。

 俺の直感は正しかったわけだ。

 しかし、四属性の術はノーモーションで使えるようだ。


 ならば、さっき彼が使おうとしたモーション付きの技とは一体……?


「岳志君」


 脳裏に声が響いた。

 聞き覚えがある。女神の声だ。


「私はわけあってそこに顕現できません。しかし貴方が対峙しているのは神。こうなっては仕方がありません。返しましょう。貴方から取り上げていたあのスキルを」


 俺は頬を緩める。

 神族の特権だからと封じられた強力なあのスキル。

 あのスキルの使用が再度許されるとは。


 サンダーアローのスキルが、俺の中でアンロックされたのがわかった。


 相手が天に高々と手を掲げて集中する。

 俺は手に雷光を集めてバックホームのイメージを頭に浮かべる。


「雷光」


「サンダーアロー!」


 二つの稲妻が二人の間でぶつかりあった。

 シュヴァイチェが目を丸くする。


「馬鹿な、神でもないお前が雷を駆使するなど……貴様、神格に足を踏み入れているとでも言うのか?」


 プライドは時によって邪魔となる。

 相手が戸惑い喋っているうちに、俺は地面を蹴っていた。

 俺の短刀が、シュヴァイチェの胸に向かって突き進む。


 シュヴァイチェは我に返って上昇して回避を試みたが、それよりも俺の短刀の切っ先が相手の腹部に突き刺さるほうが速かった。


 そしてもう片手の短刀が、シュヴァイチェの胸を狙った。


(終わるのか……? この長い戦いも?)


 エリセルとの戦い。模造神と化したエイミー。安倍晴明との戦い。神秘の道具を巡る戦い。今までの一連の騒動が、走馬灯のように俺の脳裏を巡った。



つづく

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