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童貞の迷い

 ベッドに押し倒された。

 柔らかい肢体が体にくっつき、心音が跳ね上がる。


(相手は雛子だぞ)


 そう思うのだが、悲しいかな心の童貞が落ち着かせてくれない。

 雛子は上着を脱ぐ。

 下着と肌が顕になった。

 綺麗な肩のライン。くびれのある腰。大きな胸。

 一年前はまだ子供だったのに、すっかりと女性の体になっていた。


「岳志君の為に、スタイル維持してるんだよ」


 そう言って、雛子は怪しく微笑んだ。

 そこで、俺は我に返った。


「待て、待て待て待て」


 手で雛子の動きを制する。


「それはマズイ」


「マズくないよ。私、二番目でも良いって前に言ったじゃん」


(なら……良いのか……?)


 自分の頬を張る。


(良いわけ無いだろ)


「あのな、雛子。自分を大事にしろ。お前を一番大事にしてくれる人は必ず現れ」


 雛子の顔が近づいてくる。

 そして、その唇が、俺の唇を塞いだ。


「もう言葉はいらないよ、岳志君」


 そう言って、雛子は気恥ずかしげに、ブラのホックに手を回した。


「遊びで良いんだ。私は。岳志君なら、後悔しないから」


 落ちかけたブラを、俺は慌てて手で押し留める。

 雛子は、きょとんとしていた。


 迷いは、ある。

 絶好の機会なのでは、という思いは、ある。

 悲しいかな、俺も男だ。欲には弱い。

 けど、遥を裏切るわけにはいかない。


「駄目なんだ、雛子」


 雛子は唖然とした表情をしていたが、そのうち涙目になる。


「そっか、ここまでしても、駄目なんだ……」


「ああ、駄目だ」


 沈黙が漂った。

 俺は、なにも言えない。

 雛子はきっと、頭の中がこんがらがって、整理に時間がかかっているのだろう。

 そのうち、その整理を放棄したように、雛子は上着に袖を通した。


「ごめん、帰る」


 泣いていた。

 後には、複数の菓子が残された。

 溜息を吐く。

 明日からどんな顔で雛子と顔を合わせれば良いのだろう。


(それにしても、あいつも根気強いよなあ……)


 俺を好きと言い始めてから一年。

 ずっと折れない思いは何処から来るのだろう。

 応えてやれない自分も少しもどかしかった。



+++



 六華は座って目を閉じて集中していた。

 体の中を魔力が循環するイメージ。

 それが徐々に掴めつつある。


「良い感じだね」


 刹那が言う。


「良い感じに、体内の魔力が高まっている。次はそれを爆発させるステップに進もう」


「爆発、かぁ」


 ピンとこない、というのが正直なところだ。

 この魔力を循環させるイメージというのも数週間かかっている。


「術はイメージ。コツさえ掴めば早いよ。継承者レベルまで行こうと思えば何年もかかるけど、そこまでは教えられないな、悪いけど」


「うん、そこまで面の皮は厚くないつもりだよ」


 六華は苦笑する。

 なんにせよ、また順調に次のステップに進めたわけだ。



+++



 アリエルは胡座をかいて腕を組んで座り込んでいた。


「中国地方にもなし、か。調べてみると色々怪しい場所はあったんだけどにゃー」


 ぼやくように言う。


「……となると、残るは九州と関東にゃね」


 残る神秘の道具は二つ。

 残る地方も二つ。

 どちらかに二つあるか、一つずつあるかはわからないところだった。



続く


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