いざ、定山渓へ
新千歳空港からバスに乗り込む。
あかねと隣同士の席に座った。
昨日一晩語り明かしただけあって息はぴったりだ。
「空港からバスが出てるなんてイチオシスポットなんだな」
「結構有名だよー。勉強不足だなー」
「温泉なんて草津ぐらいしか知らないや」
「草津って地名も全国各地にあるから勘違いしやすいんだけどね」
「そうなの?」
「そうだよ」
バスが発車し始める。
そのまま、小一時間は走っただろうか。
赤い炎が、俺達の前に灯った。
あかねが立ち上がり、運転手の前に歩き出す。
「すいません、停めてください」
「困りますよ、お客さん、途中下車だなんて」
「連れが体調を崩したんで、コロナかもしれません」
ざわつきが生まれる。
「コロナ……?」
「嫌だぜ、密室で」
運転手は渋々と言った感じで停車する。
「救急車、呼んでくださいよ」
そう言って、下車させられる。
バスは窓を明けると、再出発した。
「あーあ、大変だ。到着するなりコロナ検査だぜ、あれ」
俺は呆れたように言う。
「我ながらその場しのぎにしては苦しい嘘だったわねー」
あかねは悪びれずに言う。
「けど、アリエルさんの導きよ。この近くに、神秘のアイテムが有る」
「その前に、戦わなければならない相手がいるみたいだけどな」
俺はそう言って、相手に向かい合った。
俺達と一緒に、降りてきた二人組がいた。
二人は俺達を見て、余裕の微笑みを顔に浮かべている。
精霊クラスではない。そう直感で悟った。
決闘のクーポンを起動する。
世界が白い空間に塗りつぶされた。
そして、相手の衣服が燃え尽きた。
その下から白い法衣が現れ、翼が現れた。
相手は二人は宙に浮く。
「アリエルと離れたのは愚策だったなあ退魔師! その半神の残りカスと命運を共にするがいい!」
「あかね」
俺は言葉短かに言う。
「俺の魔力を半分持っていけ」
あかねの特性は集束。
周囲の仲間の魔力を集め、束ねることができる。
安倍晴明戦では六大名家の六人の魔力を結集し、刹那に命運を託したという。
「それしかなさそうね。借りるわ。貴方の力」
魔力が持っていかれるのを感じる。
それでも、負ける気はしない。
どうなっているんだろう、俺の魔力。
度重なるレベルアップで、底が見えない。
負ける気がしなかった。
つづく




