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剣はどうする?

 俺の頭を悩ませたのが、神殺しの長剣をどうするかという問題だ。

 幸いなことに鞘はある。あるのだが、持っていることが知れれば銃刀法違反で一発逮捕だ。

 クーポンの世界にしまっておく手もあるかもしれないのだが、アリエルが言うには、クーポンの世界ごと殺されてしまう可能性があるらしい。


 まったく、神性特攻という特性も不便なものである。

 結局、竹刀をしまう筒状のバックを買ってそこにしまうことにした。

 バレそうになったら最悪縮地で逃げれば良い。


 何故そこまでしてこの剣を持ち運ぶのか。

 後から分かったことだが、クーポンの世界の能力は、この剣を持っているときしか現世に持ち越せないのだ。

 つまり、この剣がなければ俺は一々クーポンの世界を展開しなければレベルアップの恩恵を受けられないのである。

 剣を持ち運ぶデメリットより、メリットが勝った感じだ。


 俺達は新幹線に乗って、一路北陸へと向かった。

 何故か、エイミーもいる。


 何故だ、と対面に座った今も思う。


「なあ、お前実は芸能界引退したのか?」


 サングラスに帽子をかぶったエイミーが答える。


「いんや。エイミー・キャロラインはコロナでやむなく病室で休養をとっているんです。ここにいるのはただの一人の旅行客」


「外国人の旅行客は芸能人みたいに美人だな。外国人は美人揃いだって勘違いさせちまうぜ?」


「んー。けど日本人老けないよね。不公平だと思うよ」


 嫌味が通じない。どころか、どこか調子に乗っている感すらある。

 呆れ混じりの俺の感情を察したのか、エイミーは顔をしかめる。


「だって、岳志が北陸に帰るんだよ? 私もいなきゃ嘘じゃない。本当なら六華も連れてきたかったわよ」


 その一言に、俺は背もたれに体重を預ける。


「……そうだな。思い出話する相手もいなけりゃ暇で仕方ねえや」


「それに、エイミーは戦力として十分頼りになるにゃ」


 隣に座るアリエルが上機嫌に言う。

 確かに、前回の戦いでは防御結界に随分と助けられた。


「……あんま良い思い出ないんだよなあ」


「私の前でそれ、言う?」


 信じられない、とばかりにエイミーは言う。


「エイミーとの思い出は別枠だよ」


 俺は苦笑して言った。

 エイミーと和解するまでは、忘れてしまうほど嫌な思い出だったが。

 新幹線は向かっていく。

 始まりの地へ。



続く


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