集束
光が消え、古神像は鳴動を始めた。
アリエルは炎の結界で俺達を守ってくれたらしかった。
「私は自分を守っただけだにゃ。たまたま背後にあんたらがいただけだにゃ。その点勘違いしちゃ駄目にゃよ」
アリエルは淡々とした口調で言う。
俺達三人は苦笑して、そして再び相手に意識を向ける。
「集束の力を使ってみようと思う」
刹那は、覚悟を決めた声で言う。
「集束って、あかねの力だろう? 一階堂家の秘伝だ。使えるのか?」
「前に一度借りたことがある。感覚だけなら体にある。再現できるかもしれない」
つまるところ、答えは。
「エイミーさんの理の上書きを岳志の短剣に集中させる。それで強制的に相手をぶった切る。それしか勝ちの目はない」
「退魔の効果も薄いみたいだしな。それしかないな」
「エイミーの力が役に立つなら私はいくらでも力を貸すよ」
「なら、それでいきましょう」
刹那の言葉に、俺達は頷く。
刹那は両手を前に差し出し、意識を集中させる。
エイミーの力が、俺の短剣に注ぎ込まれる。
古神像が再び光り輝き始める。
俺は跳躍し、縮地で相手の眼前に移動する。
その速度に相手は反応する暇はない。
短剣の刃先が伸びている。
エイミーの過剰エネルギーだ。
俺は、それを相手の脳天に叩きつけた。
刃が通る。
理を上書きする刃だ。
理不尽極まりない。
いかなるものもバターのように切り裂く。
「うおおおおおおお!」
相手の脳天から股までを一直線に切り裂く。
鳴動が消えた。
古神像は、真っ二つになって、地響きを立てて地面に崩れ落ちた。
そして俺は、クーポンの世界を解除した。
「やったわね」
アリエルが微笑んで言う。
「ああ、良くぞやってくれた」
あの老人が、いつの間にか、この場に現れていた。
続く




