硬化防壁
縮地を使って一瞬で相手の首筋を断つ。
しかし、意味がない。
何故なら、相手の首には血管がないから。
それは、僅かな傷にしかならなかった。
「鉄破孔!」
刹那が肘打ちを相手の膝に当てる。
しかし、爆発しない。
刹那の放った術は相手の膝の中で中和されたようだ。
剣が振るわれる。
俺と刹那とアリエルは跳躍して避け、エイミーは咄嗟に防壁を作って防いだ。
なるほど、晴明のような消滅術でなければ防ぐ術は覚えているということか。
「硬化防壁……」
アリエルが呟くように言う。
「知っているのか、アリエル!」
俺は問う。
「古代人の技術にゃよ。まだ天と地が近かった時代の産物にゃ。通じるとしたら岳志の短剣か、エイミーの理の上書きか。しかしどちらも必殺には程遠い」
「お前の炎はどうなんだ?」
「これは地上人同士の争い。天上人であるところの私は不介入だにゃー」
そうだった。晴明戦にもさらりと参加していたからすっかりと忘れていた。
あれは天使の手引だったから特例ということだったのだろうか。
もしくは、姉の仇の存在を知って気が動転していたのかもしれない。
「エイミー、光を連打してくれ! 防御は俺に任せろ!」
エイミーを抱き上げて、俺は跳躍する。
光が降り注ぐ。
それは古神像を削り取っていった。
「ああ、もう、あかね達の力があれば……!」
もどかしげに言って、刹那は古神像の剣を白刃取りし、真っ二つに叩き折った。
「十分に働いてるよ、お前は!」
言うと、俺はエイミーを離して、短剣を古神像の脳天に叩きつけた。
頭に突き刺さるが、そこには脳がない。
絶望する。
致命的な一打というものがこの相手には存在しない。
そして、離脱する。
エイミーの空からの一撃がさらに古神像を削り取る。
その時、古神像が輝き始めた。
眩い光が周囲を包む。
「皆、私の背後に回るにゃ!」
アリエルが焦った調子で言う。
光が、周囲を削り取っていった。
続く




