六大当主対晴明の幻影
「とりあえず、集束させてもらうわよ!」
そう言って、あかねは手をかざした。
同時に、指示を出す。
「陸はありったけの式神を、紗理奈はそれに火属性の付与を!」
紗理奈はそれだけで得たりとばかりに微笑む。
「りょうっかい~」
陸はまだ理解していないらしいが、指示通りに式神を出した。
刹那は自分の体から力が抜けていくのを感じた。
それと同時に、与一の力がどんどん強大になっていく。
「技量で勝る与一に力を集中させる。はじめは防御を担当して! 陸と紗理奈は式神部隊を晴明に特攻! 以上よ!」
晴明が扇子を一枚開き、閉じる。
「準備は、できたかな。子孫達よ」
「ああ、十分にな」
その声は、晴明の背後からしていた。
晴明は目を見開く。
烈火の如き突きが晴明を襲う。
それを、晴明はかろうじて回避すると、札を取り出して爆破させた。
しかしその時には与一の姿はそこにはない。
六階道家の体内を循環させ身体能力を向上させる術だ。
与一は蹴りを放つ。
晴明が吹き飛ぶ。
そこに、陸の式神が大量にしがみついた。
「着火」
紗理奈が楽しげに、しかし僅かに緊張の籠もった声で言う。
その瞬間、式神は大量爆発を起こした。
晴明の服は上半身が焼けただれ、顔も体も煤だらけになり、所々焦げている。
「ちいっ」
晴明は疎ましげに腕を振る。
その指に持たれた札から癒やしの光が晴明を包む。
その指が、日本刀で断たれた。
「回復の隙など与えるものかよ!」
「どんどん行くよ、三階堂!」
「ああ、なるほどね。理解した」
陸はほくそ笑んでさらに大量の式神を産む。
はじめは腕を組んで仁王立ちしていた。
守に転じている晴明。それが攻に移るタイミングはいつかを見定めるようにただ状況を観察していた。
「お前の言う通りだった、刹那!」
与一が叫ぶ。
「俺達六人は、晴明に届き得た!」
与一の振りかぶった日本刀が、晴明に振り下ろされた。
その時、晴明の体が眩い光を放った。
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「なるほど、六大名家の当主が結界の地に降り立つことそのものが結界の解き方の一つであったか……」
薄暗い部屋の中で声が響く。
老人が顎髭を撫でながら呟いている。
いつもは見慣れた右側の席の男がいない。
「ならばこちらも打てる手を打たんといかんの」
「ですなあ」
左側の席の男が同意する。
老人は重々しく頷く。
「エイミー・キャロラインを招集せよ。どんな手を使ってでも構わん」
左側の席の男は頷くと、電話の受話器を取った。
続く




