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静寂後に

 俺達を待っていたのは静寂だった。

 同化型なんてなにかの間違えではないか? そんな考えが脳裏をよぎる。

 しかし、与一も、紗理奈も、刹那も、覚悟を決めた表情だ。

 俺も注意深く周囲を見渡した。


 開け放した戸から風が吹いた。

 その瞬間、疾風のように人影が飛び出してきた。

 一人。

 それは瞬時に与一に膝蹴りを繰り出していた。


 日本刀で受け止める与一。しかし吹き飛ばされる。

 そこに、吹き抜けの二階からもう二人。

 明確な殺意を持って与一に襲いかかった。


 紗理奈の札が光る。

 樹木が生えて一人がそれにぶつかって失神する。

 もう一人は刹那が飛び蹴りで返り討ちにしていた。

 なんて身体能力。


 感心している暇はない。

 俺は与一を吹き飛ばした一人が着地したところを見計らって短剣で斬り伏せていた。


 残るは三人。


「やれやれ、なんて力だ」


 ぼやきながら立ち上がる与一の背後に、人影。

 それを与一は振り向きもせずに貫いていた。


 これで、あと二人。

 同化型の弱点。それは正気を失っている個体が多いこと。

 今回もその例に漏れず、残った二人が取った作戦は正面突破だった。


 刹那が跳躍し、一人を蹴り上げ、もう一人を殴りつける。

 二人は吹き飛んで、壁にめり込んだ。


「なんだその身体能力……」


 俺は呆れ混じりに言う。

 陰陽師のイメージと明らかに違いすぎている。


「陰陽の力を身体能力の向上に当てる独特の技術。六階道家の秘法ね」


 紗理奈がつまらなさげに言う。


「やるじゃないか陰陽連諸君」


 子供の声が病院内に響いた。

 反響するような、不思議な声だ。


「時間が稼げるかと思ったが、これは僕が出るしかなさそうだ」


 ロビーに緑色の光が灯った。

 それは子供の形を成して、神性なオーラを放ち始めた。


「この地を守る最後の精霊である僕を、倒せるかな」


 そう言って、子供は微笑んだ。

 空気が一瞬で張り詰めた。


「おかしい……」


 刹那が感情を感じさせぬ声で言う。


「居場所を特定されながらも戦力を分散させて居座るとは……」


 俺はスマートフォンを取り出すと、決闘のクーポンを即座に起動した。




続く


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