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廃病院へ

昨日は更新がなくてすいませんでした。

早朝に目が覚める癖があったのですが最近それがなくなりました。

四時頃の更新はなくなって、ずれこむ形になるかもしれません。

 周囲から建物が減ってきて、畑景色が増えてきた。

 車の中には聞いたことがない洋楽が延々と流れている。


「案内役が来るとは聞いていたが」


 与一が口を開く。


「お前だったとは意外だったな、六階道」


「痛くない腹を探られるのは私も嫌ってことよ」


 六階道刹那は淡々とそう言った。


「で、目的地はどこだ?」


 俺は問う。


「亀岡にある廃病院。そこが、堕天した精霊の集会場になっていたらしい」


「精霊、かぁ」


「アリエルさんなら十分対処できる相手ね」


 刹那はやはり淡々とした口調で言う。

 その声色から感情は見えない。


「なあ、六階道さん」


 俺は気になっていたことを問うことにした。


「なに?」


「安倍晴明って、自分の力を使って朝廷権力を支配しようとした奴なんだろ? なんでそんな奴を可哀想と思うんだ?」


「インスピレーションかな」


 思いもしない言葉に、俺は戸惑う。


「小学校時代にね、すべてを聞いた。私達の先祖のこと。皆、憤慨してた。けど、私だけは思ってしまった。息子の成長も見れず、妻とも老いれず、天界の事情でただ一人封印された。そんな彼が、可哀想だと」


「昔からあんた、捨て猫とか拾ってくる奴だったわねえ」


 紗理奈が呆れたように言う。


「だからと言って私はアリエルさんをハメたりするほど落ちぶれたりはしていない。そしたらアリエルさんもその友人達も可哀想じゃない。私は一方を贔屓するようなことはないわ」


 おや? 随分と話が変わってきた。

 無感情でサイコ気味だと思っていた。

 その実、彼女は随分と優しい女性なのかもしれなかった。

 純粋過ぎる、とでも言うべきだろうか。


「純粋、なんだな。その歳で」


「……絶対処女よ」


 紗理奈がせせら笑うように言う。

 急ブレーキが踏まれる。

 後ろからクラクションが鳴らされる。


「だ、だ、だ、誰が処女よ!」


「悪かった六階道。紗理奈には俺から良く言っておくから、安全運転を心がけてくれ」


「……心配しなくても、もう着くわ」


 そう言って、刹那は再び車を運転し始めた。



+++



「言わなくて良かったんですかのう」


 秋雨が言う。

 陰陽連の本部だ。


 室月は顎髭を撫でながらとぼけるように言う。


「なにがだ」


「エイミー・キャロライン。かのものが、再び神の力を取り戻しつつあると」


 室月は椅子に体重を預けて溜息を吐く。


「所詮は客分。伝える情報は最小限でいい。それに」


 室月は髭から手を離して、膝においた。


「こちらの力は京都限定、あちらは日本全土だ。知られると分が悪いと言うのもある」


「厄介なことになりつつありますなあ。一度外れたタガは緩むということですかな」


 雨月が溜息混じりに言う。


「天界大戦、模造神の誕生、天使の失踪、我々はなにかの転換点にいるのかもしれんな」


 室月は遠くを見るような目で、呟くように言った。



続く

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