陰陽連の長
与一が重そうな扉を開けると、大きな机が三つ並んでいた。
右から面長な男、中央にずんぐりと太った男、左に細身の男。
いずれも白髪の壮年の男だ。
只者ではない。
色々な強者を見てきた俺のセンサーがそう告げていた。
「右近少将秋雨」
面長な男が言う。
「左近少将雨月」
細身な男が言う。
「陰陽連の長、室月である」
ずんぐりと太った男が言った。
違和感があった。
中央の男の放つオーラ。
それは、エイミーがかつて神となった時に放ったオーラとよく似ていた。
「あんたが放つオーラ……神のオーラによく似ている」
「そうか、お前が岳志か。女神と縁があり、エイミー・キャロラインと一戦交えし者」
太った男が興味深げに顎髭をさする。
「いかにも。私の力は神に近い」
太った男はさらりと言った。
「質の問題だ」
男は言う。
「エイミーは一般人の力を何万と束ねて神となった。それよりも質の高い陰陽師の尊敬を何百と束ねれば、それは神にも近づこう」
そう言って、意味深に微笑む。
「室月様」
与一が口を挟む。
「アリエルさんが消息を絶った件についてですが」
室月の顔から表情が消えた。
「その件か」
「陰陽連の中に裏切り者がいると思われます」
与一の断言に、三人は神妙な表情になった。
「相わかった。裏切り者の捜索に努めよう」
沈黙が漂う。
俺は拍子抜けしていた。
「俺に捜査とか、させてくれないのか?」
「君はあくまでも来客だ。そのような権限はない」
「相棒を失って、今まで道理悪霊退治に励めって言うのかよ」
「いかにも」
俺は室月を睨みつける。
室月は哀愁の漂う目で俺を見つめる。
二つの視線が絡み合う。
そのうち、室月は溜息を吐いた。
「アリエル殿が消息を絶った地。その場所についての情報を提供することはできる。あるいはその地で、なにか掴むことができるかもしれん」
「その場所は?」
「亀岡。京の外れだ」
ヒントは掴んだ。
後は、どう活かすかだ。
続く




