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紗理奈対与一
俺は身構えて腰を落とした。
しかし、与一が俺を狙うことはなかった。
炎の玉。爪の一撃。狙うのは全て紗理奈だ。
紗理奈は当主を自認しているだけあって、上手く躱している。
攻撃に転じねばならないだろう。
俺は現実世界で手に入れた、悪霊だけを切るという短刀を呼び出した。
そして、相変わらず紗理奈を集中攻撃する与一に飛びかかった。
一瞬で与一の手に長刀が握られる。
長刀と短刀がぶつかり合い火花を散らす。
ここはクーポンの世界。
レベルアップしている俺のほうが有利。
与一は押されると、後方へ向かって転々と転がっていった。
「お前さえいなければ……!」
絞り出すように言う。
紗理奈が目を丸くする。
おっ、やっとこさ絞り出したそれが本音か。
俺は、悪霊しか切らないという短刀を与一の胸に沈み込ませていた。
続く




